メッセージ性の高い映画と言うよりは、
その年齢なりの偽らざる心境を、
思いっきり趣味に走って吐露しただけの映画に見えました。
それでもそれなりに見せてしまうのは
才能と人柄のなせる技でしょうか。
この映画の主人公の性格って、
日本で言ったら一昔前の文学青年という感じで
正直鼻持ちならないんですが、
そうは見せない説得力のある率直さが素晴らしいと思います。
そのあたり、『海を飛ぶ夢』のような
ひねりすぎた映画よりは好感が持てます。
家族には告白できない病気の告白を
実の祖母には出来てしまうという辺りは
まるっきり不可解で、主人公のみならす、
脚本もずいぶんと底が浅いな、とも思ったのですが、
この年でほとんど若書きが取り柄の文学作品みたいな映画を
撮ってそれが許されてしまう、というのは
やはり才能のなせる技でしょう。
そして、この映画の特筆すべきところはなんといっても
あるタイプの人の生き様を克明に捕らえた細部の細かい描写です。
(初公開時劇場鑑賞)