叡福寺清子

DOGMAN ドッグマンの叡福寺清子のレビュー・感想・評価

DOGMAN ドッグマン(2023年製作の映画)
3.8
呼延灼が一番注目している俳優の一人,ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの最新作となれば,たとえリュック・ベッソン監督作であっても視聴しない選択肢はございません.もっとも,リュック・ベッソン作だったとはエンド・クレジットで気付いたんですけどね.こんばんわ.三遊亭呼延灼です.
そのベッソン作.劇場での視聴は初めて.本作をもってヴァレリアンの惨劇は忘れてあげる事にしました.あれはカーラ・デルヴィーニュの無駄遣いと批判されてもしょうがない作品ですしお寿司.
で,本作.あれほど過酷の少年期を過ごしたにしては,人格者に育ったダグラスの生き様に呼延灼は落涙しそうになりました.愛を知らず,ただただ世界を憎むことしかなかった父親,その遺伝子を色濃く受け継いだ兄.その二人によって犬舎に閉じ込められたダグさん.元々犬好きだったダグさんが,その犬舎暮らしで犬との特別な絆を築き,片時も離れる事がなくなったのは当然の事.さらには父親が放った銃弾によって脊髄を損傷し下半身不随となってからは,犬と離れる生活は不可能となりました.そのわんこが鬼賢い.下手すりゃ私より賢い.代わりに高座上がってもらえませんかしらね.
ダグ自身は隠者というわけではなく,自分を受け入れる人とは交流ができる方.つまり,人を恨む事もないし,世を儚むような人物ではございませんでした.でなければ,あんなに楽しそうに,サルマさんとの演劇活動は行っていなかったでしょう.そのサルマさんの中の人,グレイス・パルマさん.本作が長編作品デビューってんで,驚いた呼延灼であります.世界は才能に満ちあふれているんでございます.

ただ,本作をバイオレンス・アクションとかダグさんをダークヒーロー扱いする本邦の宣伝部はいかがなものなんでしょう.まぁ同じ犬映画の『ホワイト・ゴッド』に「この争いを止めるのは,少女の愛と勇気」なんてチャッチコピー付けちゃうくらいですからね.その『ホワイト・ゴッド』のポスターの絵柄,さらにはダグの最期が「フランダースの犬」と重なるのは,なんかの啓示か何かかしら.

なお,犬は無事です.ご安心ください.あと「犬の唯一の欠点,それは人間への忠誠心」は24年オレデミー名台詞賞にノミネートされました.