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キエフ裁判のtaDaoのレビュー・感想・評価

キエフ裁判(2022年製作の映画)
3.0
ナチス軍内での仕事内容も役職もバラバラな上に罪を完全に認めている者とそうでない者15名を同時にソ連刑法の元に裁くキエフ裁判。終盤、判決根拠であるソ連刑法の条文と被告人の名前が長々とお経のように述べられている間、裁判を通して彼等の犯罪が罪状に値するかを吟味したのではなく、被告人とその属したグループ、ナチスという絶対悪を可視化し断罪する儀式なのだと思った。

会場の大半を占める傍聴席に座る地元民は証言者の発言中ヤジも飛ばさず犯罪の目撃者であり被害者でもある同胞の背中を固唾を呑んで食い入るように見つめている。皆一方方向を黙って向いていることで証言者の発言内容が後ろに控える集団の記憶が乗り移ったかのような印象を与える。絞首刑の会場ではコロッセオの観衆の如く処刑台を180°取り囲み、驚嘆と解放の思いが混ざった歓声が怒号のように鳴り響く中、死刑囚は遠のく意識の中その悲鳴のような歓喜に事切れるまで晒され続けてから地獄に落ちるのだろう。
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