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裁かるゝジャンヌのtaDaoのレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
4.0
実際の裁判記録をもとに脚本が書かれ、ジャンヌを英雄視せず、あくまで尋問調書から読み取ることができる1人の人間として描いているのが本作。ジャンヌvs.他全員の構図はとても息が詰まります。「迫真の演技」と言えばそれまででしょうが、宗教裁判を扱うという異質な異常さにさらに拍車をかているのか空間の断片化です。

ジャンヌをはじめ俳優たちの圧倒的な演技とその表情のアップが多いことにくわえて、室内の強烈な白さが空間を意図的に捻じ曲げている印象を受けます。屋外も状況は似ていて、人を見上げたままの移動撮影やアップのショットが多く、街並みがコラージュに感じるような違和感が全編を覆っています。

言うまでもなく人は自己中心的に、知覚するほとんどの情報を切り捨てて生きています。キュビズム絵画のように断片化された現実を切り貼りして恣意的に現実を再構築しています。もちろん映画鑑賞もそれに当たり、その恣意性が自分から出たものでないからこそ、この映画が描く登場人物達の存在が不穏で不気味なまでの迫力で迫ってくるんだと思います。
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