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破壊の自然史のtaDaoのレビュー・感想・評価

破壊の自然史(2022年製作の映画)
3.0
音は恐らくぼぼ全編に亘って音響が設計、録音されていて、大胆でありながら精緻で繊細な音と映像が生む臨場感がとんでもない。

原題を見ると"Natural"が History of Destructionの前にある。Naturalは「自然の摂理」とも訳せるが、何を自然と定義するか?私はピカソ『ゲルニカ』の画面構成を想った。画面には主に爆撃を受けて苦しむゲルニカ市民の様子が描写されているが、そこには爆弾を落としたナチス側の描写が一切ない。つまり加害者が被害者の姿を認識することなく大量殺人をおこなった。その始まりがゲルニカであり、それは第二次世界大戦中にヨーロッパと日本の都市を徹底的に破壊する絨毯爆撃に発展する。
視認範囲外からの殺人は兵器が担い、その兵器は都市で生産される。そしてその生産者は都市に住む住人であり、住人が住む街を焼き払えば相手方の兵器の生産能力が落ち、戦意の喪失も期待できるといった筋書きで実行されたのだろうが、同時にお互いに対して憎悪もばら撒きあった。これが今に続く破壊の作法なのであろう。
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