CINEMAと暮らす

リバーシブル/リバーシブルのCINEMAと暮らすのネタバレレビュー・内容・結末

3.3

このレビューはネタバレを含みます

かなり救いの無いラストに現実の厳しさを思い知らされる。統合失調症なのか、病名はわからないが、田中は幻覚が見える。どこまでが現実なのかは別として、田中にとって話し相手になるイマジナリーフレンドは全員、”現実に存在する人”という認識のはずだ。

他人から見れば、もはやどこからどこまでが現実なのかわからない世界だが、田中はその世界を現実と認識して生きている。SNS上だけでやりとりするような

この作品のラストを見た直後、救いのない現実の厳しさを思い知り、絶句した。しかし、視点を変えると幸せなラストとも考えられることに気づく。

人それぞれ理想とする世界があると思う。あんなこといいな出来たらいいなと考えてはみるが、なかなか自分の理想通りに人生は進まない。少しでも理想に近づいた錯覚を覚えられるよう、SNSや仮想現実が作られたのではないかとすら思える。人の夢は終わらないわけだ。

主人公の田中もまた、あんなこといいな出来たらいいなと日々考えている。色々なことを知って、自分の理想とする世界に近づきたいのだ。しかし、社会が彼を邪魔する。社会が共有する”正常”は、田中を人間的に成長させてくれる要素を取り除こうとする。

そう考えると、実のところ、自分はあのラストを無意識に望んでいたのではないかと気付かされる。「田中が正常になってほしい、現実を生きることこそ重要なんだ」と自分の考える”正常”を押し付けてしまっていたのかもしれない。

田中にとっては、彼の見ている世界こそ現実であり、生きるべき世界だ。だとすれば、他人が壊してよいものではない。田中の生きる現実と、自分の生きる現実の重なる部分から見つめていけば、”正常”、”異常”の境目は溶けていく。楽観的と非難されるかもしれないが、そんなことを自然と考えていた。