K

スカウトに誓って 米国ボーイスカウトの隠蔽された記録のKのレビュー・感想・評価

-
2/10/2023 20:53 Netflix

"男性から性的虐待を受けた少年はひどい汚名(スティグマ)を着せられるんだ--少年に非はないのに"

---------------

" 友人のサバイバーが言っていた--『被害者は恥を抱えている』。"shame"とは非常に重い言葉だ。なぜ被害者が恥じなきゃいけないのか、恥を感じるべきは連盟だ "


"素晴らしい団体で、被害者も活動の継続を望んでいるよ"というスカウト幹部の言葉に耳を疑う。
虚言半分、しかし真実も半分だろう。昨今のJ事務所所属タレントの中に"素晴らしい事務所だから存続を望む"と述べる者もいるように。しかしそれは、団体の汚れ切った過去を洗い流す方法にはならない。勝手な望みが被害者の声を無視して存続していい理由にはならない。

/同性愛者と小児性愛者の混同問題が語られていた。出資者であるホモフォーブの教会からの長年の支援を打ち切られるわけにいかないからと余計にスカウトの汚点を隠し通し、糾弾すべきは実際に子供達に手を出した小児性愛のアビューザーではなく、同性愛者が悪いのだと。気を逸らさせるために、事実ではない言葉が罪のない他者を追いやる。

/連盟には破産してつまり逃げられたと。被害者やスカウトに心身を捧げてきたかつての子供達や家族に対して誠実じゃなさすぎるよな。そして未だに被害者への存在賠償の支払い時期は知らされず、スカウトは活動を続ける、と。がよーーーー!!!!!
スカウト連盟の幹部の言葉は常に空虚に響く。謝罪は続けていきたいし、変化を見ていてほしい、と訴えるが、これまでのセクシュアルアビューズの問題を見て見ぬ振りをし続けてきたこの団体のどこを信じろと言うのか。やはり、問題が大きくなってからどう対応取るかが、団体の精神が問われる瞬間だと思う。今しかないぞ、解体や全入れ替えのタイミング。マジで。ここまでしてJ事務所が何も変える気がないってことは、時代の先頭を切る気がないってことだから。
マジでダサくないか?今先頭にいたら最高にクールだろ……変わろうよ。汚れちまった過去は消せないとしても、誠心誠意の償いで変わることはできるんだから。

/"金目当ての人は一人もいない、自分の声を届けて、傷を癒す機会を得たいんだ"と被害者の一人は語る。
長年の被害を告発した被害者に対して、名声や金目当てだろうと平気で言ってのける人間がいるが、本当に芯を食った考えをしていないなと思う。何が名声のためだ。性的被害が極限まで軽んじられるこの国での告発は、むしろ自身の名声に傷をつけることに他ならないというのに。何が金目当てだ。金銭での償いは、被害者の失われた莫大な日々をほんの僅かだけでも取り返すきっかけになる。他人が声を上げることの何がそんなに面白いのか全く理解できない。本気で。

/"被害の告白を初めて人にした時には大人になっていた。大勢の被害者が声をあげていたからできたんだ"
"父が体調に上がった時のトロフィー。父との繋がりを感じられる。これのおかげで告発する勇気が持てた。これを抱えて何度も泣いた。時に何度も八つ当たりして、イーグルの羽根が接着してあって状態は悪いけど、誇りだ"。
スカウト文化に血肉から馴染みのない日本人からしたら、いまいちスカウトの生活との距離感って分かりかねてたけど、被害者によっては多分スカウトとは誇りでもあるんだよねえ。自立するための誇り高きプログラム。そこに恥を持ち込ませるなマジで。(スカウト加入が"男らしさ"の無意識の育みにも繋がってしまう面もあると思うけど、それは別の話として。)

/実際にスカウトで働いてきたからこそ実態を把握している人物が語る、の力強すぎだろ(当然だけど)。内部の人間が告発し、それを正義として取り上げてくれる人がいるって環境、人道的に見れば当たり前なのにこの終わってる国の人間からしたらめちゃくちゃ恵まれたシチュエーションに思えるよ……。

/あとmolestという単語が"いじめる"とポップに訳されてるのが勿体無いんだよなあ〜。ぴったり対応する語がないので仕方ないとは思うが、そんな可愛らしい響きの語じゃない。尊厳を蔑ろにする行為でしょうよ。チャイルドマレスターとして近年知られてきてる語なんだから、もう少しシリアスな訳語があってもいいはずなんだが。
K

K