つぐみ

アイアンクローのつぐみのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.8
な〜にが「呪われた一家」じゃ〜何もかもが家父長制とトキシック・マスキュリニティの弊害じゃろうが〜全部意図的、人的行為じゃ〜!!!!!
えーんえーんえーんママ〜辛いからThe Bearもっかい最初から見たいよ〜

ということで上半期ベスト(暫定)出ました。脳筋スポ根ゴリマッチョ映画と思わせてマチズモの有害性をこんなにも懇切丁寧に描き切ってくれるとは。全然フォン・エリック家のこと知らんくてよかった…5人兄弟中4人死亡(史実は6人中5人らしくて泡吹いたわ)って!!!てか、そんなに都合よく男ばっか生まれる家あんの!!ベッカム家だって3人男続いた後女の子生まれてるけど!??
最初は「ジェレミーったらまたお兄さん喪ってる役なのね🥺」ってマイキーのことも思い出す余裕もあったのに、いや自身も死んでもうとるやん(ここでも白目)。

私は子どもを1人しか産まなかったし、娘を一人っ子にしたことに何の後悔もなければ一人っ子だからこそ最高に幸せな気分でいるけど、だからって兄弟姉妹のいる家庭が私たちより幸せじゃないなんて思わない。色んな意味でsiblingsがいる幸せ、豊かさ、メリット(そしてもちろんデメリットも)があると思う。フォン・エリック兄弟たちがお互いをどれだけ想い慈しみ必要としているか痛いほど伝わってきました。Patriarchy really sucksだけど家族そのものや家庭、兄弟に対して呪詛の気持ちはないのよ私も。ケリーが帰ってきたあと庭でフットボールする場面の煌めき、ここに確かな幸せがあったんだと切なくなる。
父も家父長としてのヤダみはあるけど、別に絶対悪でもないし鬼でもない、何だったらいうほど毒父だとも思わない。この人だって本当はすごく弱くて脆くて、夫婦間や父子間がworkしない局面がどんどん増えていっただけ、とも思う。だけどこれは言える、銃規制、マジで進めてくれな!!!!!

話が最初に戻るけど「呪われた」って神とか仏のせいにするのって、なんかあった時に「厄年だったから」とかいう義理の実家の感覚に近いな〜と思った。義父母は田舎の農家の出なので、彼らの親族は信心深いし、別に私も厄除けとか初詣に行くこととかはやぶさかじゃないんだけど、厄年でもじゃなくても病気することや不調になることはいくらでもありますんで…それ言い出したら完全に思考を乗っ取られますよ、と考えるのは私が慣習にうるさくない(非常識なまでに疎いとも言う)家に育ったからです。でも私はそういう義実家の律儀で義理堅いところが大好きでもあるのだが。

シスターフッドや、抑圧を受けた女子の解放を描く物語はこれまでいくらでも見てきたけど(直近のコールジェーンもそうですな)、男子が父や父権から一歩羽ばたく話って意外なほど見たことがなくて(見たことはあるけどそのどれとも違った)、inspired by the true storyでもこんなに新鮮な気持ちでみられるものがあるんだと目から鱗です。
そして、いつもよく言う、監督と演者にある旬、ケミストリーをここでも強く感じた。
ザックンはもう若いうちに稼いじゃったから好きなことしかやりませーんって余生の感じもあるけど、ハリス・ディキンソンとジェレミーに関しては、彼らの今だから演じられる、表現できる役、出演できる作品だと思いますよ。

終盤の三途の川(って欧米にもあるのか)シーン、演出としてはダサいんだけど、なんだかグッときてしまった。すごく悲しいんだけど、でも死も生の一部なのかもしれない…ってノルウェイの森みたいなことを言ってます。あれは姉妹が亡くなる話でしたね…

ジェレミー、ボス役演じるのってもう確情?契約本決まりしたのかな?シーズン3楽しみすぎ!!6月までにあと何周見られるかな…「一流シェフのファミリーレストラン」最高です!!!(なぜかこちらで告知)
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