つぐみ

成功したオタクのつぐみのレビュー・感想・評価

成功したオタク(2021年製作の映画)
3.6
こんなにシネマートに若い女性が詰め掛けてるの、「スウィング・キッズ」以来じゃないかな。おそらくみんな何かの推し活中で、他人事じゃないって気持ちで見に来ているのでは。
かく言う私は何の気なしに大好きな男たちQOTSAのTeeを着てきたんだけど(推しと言う言葉を使わないのは意地、もしくは矜持でもあるが、どう考えたって私の好きな男たちはQ含めみんな推しって表現がしっくり来なさすぎて)、そういやジョシュ数年前にDV疑惑で元妻から訴えられてたな…今は彼がcustody持ってるけどあの件どうなったんやっけと思い出したようですぐ忘れてましたアチャー。

結論から言うと、決して出来は良くない、だって処女作だから仕方ない。冗長だし、私小説だから勢い任せだけど、でもその勢いと行動力、決断力、そして折り合いをつけようとする気概には敬服する。観客も含め全ての関係者が、暴力振るったとか加害したとか事実なのか憶測かわからない不確実性に振り回されて気が気じゃないんだろうけど、基本みんな「不祥事を働いた男を愛してしまった自分」を認めるのはこわいからなんとかしてjustifyしたいのが本音じゃないだろうか。私はそんな悪の権化じゃないって言い聞かせて、罪の意識から解放されたいよね。最新のファンダムでよくわからないの、みんな信条や理念を対象に仮託しちゃってるよね、これってみんな有名人がソーシャルメディアで発言するようになったからよね。

去年からの旧ジャニーズや宝塚の報道に対して、「日本社会の構造が生み出したなんとかかんとか」みたいな訳知り顔な報道が何も本質をついていないことにひたすら白けた気持ちでいたけど、あんな凶行愚行がまかり通ってたのは、大体のファンが、ファンじゃなくても知るところだったわけじゃない。
だけど当事者であるファンは、周りが見えなくなるくらい担当や自ユニ(何回も言うけど宝塚だったら贔屓で旧Jだったら担当、V系なら本命っていう伝統的な呼び方があるのに、なんで「推し」でひとまとめにしちゃうかね、そんなジャーゴンに集約されるまでもない、もっと尊い感情でしょうが)を愛しているわけで、その熱量が、人権意識とか構造の問題を上回っちゃってたわけでしょ。いけないことだとは分かる、自分も加担してることは分かる、でもそれでも私は目の前にいる担当を愛さずにはいられないっていうのは個の感情であって、構造とか体質の話じゃないよ。実像か偶像か、はたまた二次元か三次元かって相手の話じゃなくて、愛してしまったのは私です、私の問題だから楽しいし苦しいしって話なんだっつうの、再三言うけどそれを日本のヒエラルキーだとか年功序列だとか男尊女卑だとかうまいこと言おうとしてるやつ、まじでおととい来いって話なんだよ。

もちろん線引きや意識高くあることは大事で、こちらが先方を傷つけることもあってはならないけど、愛することに罪の意識を感じる必要だってないよ。監督が「初めてのソウル、初めての特急列車」みたいに彼がくれた経験を振り返ってたけど分かりすぎて辛かった。私も初めてのひとり新幹線、初めてのビジホ、初めてのチケット交換、初めてのダフ屋wだって、17歳の時に恋に落ちたあの人たちがいなければ経験できなかった。もちろんそこに苦しさも伴うし、基本人間関係は利害だから「推し活最高🩷」なんて口が裂けても言わない、だってやるかやらないかだったら絶対やらない方がいいから笑

それでも一度落ちたもんには徹底的に向き合った方がいいし、落ちるなら早めに落ち方がいい、現象ばっか取り上げんじゃなくて、向き合うべきはそれぞれの「お気持ち」ってやつですよ!

あー、しかしバンギャルの母はまたバンギャルなりってのを痛感するから、監督の母も同じ経験してるのは笑っちまった、こんなとこまでユニバーサルなのかよっていうね!!
つぐみ

つぐみ