はぐれ

アメリカン・フィクションのはぐれのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.2
「白人が求めているものは真実ではなく免罪符だ」

このセリフに尽きる!ドラッグをやって汚い言葉を吐いて武装をして徒党を組んでラップをしてウサを晴らして最後は警官に撃ち殺される。そんなステレオタイプの黒人像を白人社会から求められるストレスを軽やかに描いてみせた本作。本来であればアカデミー賞の作品賞になることが多いトロント映画祭の観客賞を受賞しているのに、本年度は原爆を製造しておきながら自らの罪の意識に苛まれる白人達の言い訳のような『オッペンハイマー』に作品賞をかっさらわれてしまっている現実にアメリカ社会の深すぎる闇を感じる。意地でも自分達が嘲笑されている作品にはあげたくないわけだ(笑)

前々から不思議に思っていた。日本に入ってくる黒人映画と言えばドラッグと暴力と人種差別とヒップホップのどれかが絡んでいる作品ばかりだなって。いや、そんなわけないじゃない!肌の色が違うだけでカラードだって普通に恋愛もするし法は犯さずに穏やかな生活も送るしラップ以外の曲だって聴くはず。それなのにそんな作品には滅多にお目にかかれず、気付けば今作の主人公が悩まされているような紋切り型のアフリカン・アメリカン映画ばかりが消費されていく悲しすぎる現状…。いや、そろそろ次のステップに進ませてもらえませんか?っていう製作陣の切なる訴えが画面から伝わってくる。

今作は頭の固い連中にカウンターパンチを食らわすような気の利いたセリフがとにかく魅力的で可笑しいので、配信なんかじゃなくて満席の映画館で笑い飛ばしながら鑑賞したかった😢(※今年のオスカー候補作が早速アマプラで配信されているのはありがたいんだけどね)
ラストのオチもめっちゃ皮肉が効いていて最高なんだけど同時に無性に切なくなる🥺
はぐれ

はぐれ