ねまる

異人たちのねまるのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.0
東京国際映画祭にて鑑賞。
アンドリュー・ヘイpresents
アンドリュー・スコット×ポール・メスカル×ジェイミー・ベル×クレア・フォイ

製作が発表された時から楽しみにしていた作品をアジア最速で観れるということで、初めて東京国際映画祭に行ってみた!
外国人の方が半分近くいる感じで、そこで笑う?というところで笑いが起きたりするのが、鑑賞スタイルの違いとして感じられて驚き。

通常公開されたらもう一度観たい。


<下記ネタバレ含みます>

『異人たち』
孤独と死。
周りがやけに静かで、世界にひとりぼっちに感じる夜には、"死"が妙に近く感じられて、自分の腐った肉の匂いが、喉元まで感じられるよう。
自分は変わっている、Strangerだ、そう自嘲して振る舞っているようでも、逃してはくれない。

アンドリュー・スコット演じる主人公がぽっかりと孤独を感じる理由。12歳の頃、両親を事故で亡くしたこと。そして、自らがゲイであることが複雑に絡み合う。
空いた孤独を埋めてくれるのは、過去の日の両親の姿。そこに未来はなくても、彼はずっとずっと何十年という日々を追憶を巡りながら過ごしてきたのだろう。現実で誰かを愛することを恐れて。追憶の中に身を埋めるうちに、自らの過去と向き合うことになっていく。

クレア・フォイ、ジェイミー・ベル演じる両親の、完璧ではないけど、息子アダムへの愛が伝わる表情が苦しいくらいに愛おしかった。
そしてそんな彼らを見つめ返す、アンドリュー・スコットの真っ黒で、キラキラと輝く瞳。1番歳上のはずなのに、子供に戻ったような表情が印象的。
クリスマスの夜に、ペットショップボーイズの"Always on My mind"の歌詞が沁みる。

追憶は孤独を隠してくれるけど、決して未来を見せてくれない。常に付き纏うのは恐怖だ。永久に続く、孤独の恐怖。
自らの死を見つめ続けるポール・メスカルを自らの心に受け入れるということ。そのしこりは消えることはないけれど、これ以上大きくなることはないように、そして愛する相手をこの世の全てから守りたいと願うように。

孤独を抱え、死の匂いと共に、変わり者たちは歩んでいこう。私たちはひとりぼっち、ただ1人の変わり者なのだから。
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