ルイまる子

オールド・フォックス 11歳の選択のルイまる子のレビュー・感想・評価

5.0
「人のことを考えろ」というメッセージが残る。素晴らしい作品!本映画祭全てが良い映画だらけだったが、本作がまる子が見た中では、『ゴンドラ』と同率一位!こんなにも優しく豊かな映画、是非とも日本での公開を希望します!我们非常希望这部电影能在日本上映!
少年と老人(old fox=老獪な社長)との交流を軸に台湾の町で暮らすハンサムなウエイターの父と賢い少年の父子家庭、その周囲に居る女性達や少年をイジメる同級生、近所の人たちとの物語。

光と影が美しく、繊細でおぼろげな画面(ちょっと現実でない様な)、音楽もジャズが素敵でもうスクリーンに吸い込まれる。時代は1989年だが、老人が思い出す子供時代も好きだし、台湾の人々や言葉全てが優しく、しかし現実は厳しい、と伝える点も好きでした。お父さんは中華料理屋のウェイターだが、理髪店をやる、サックス奏者になりたい?など夢はあるが、結局はさえない現実を生きてる優しい男。ジャズの音楽も雰囲気あり、何が良かったって、このオールドフォックス老狐狸の老人と少年(白潤音(バイ・ルンインくん)が演じる10歳位の少年)との会話が良かった。「お前は俺だ」と自分の若い頃(日本統治下台湾)で成り上がってきた少年時代が時々出てきて少年と重なる(当時、日本語で会話している)。「人のことを考えろ」について。「資本主義」の構造を頭の良い少年への問いかけが好きだ。少年はお父さんの夢、(死んだお母さんの夢だった)理髪店と住居が一体式の一階の部屋を買いたい。譲って欲しい。でも現実は厳しくそれは不可能だった。


【ネタバレあり】最後に1階の住人の大黒柱が亡くなり、老人は横暴なやり方(いつものやり方か?)でその部屋を少年に譲ろうとするが、結局心優しいお父さんは断る。「人のことを考える人」だからだ。

少年の目で見る大人の世界、周囲のきれいなお姉さん達の父への接し方、時々来る上品な美女(門脇麦)きれいだったわ〜でも彼女もシュガーベイビー(パパ活女)だったのね〜(資本主義社会で生き抜く為か)。クリスマスの夜、彼女からもらったレコードやDSのプレゼントを開ける場面も良かった〜。台湾だから、中国の旧正月ではなく、クリスマスから続くお正月を1月1日を祝うんだな。ここもウチらは中国ではないと象徴的であった。古き良き日本の倫理観をちゃんと貫き、しかし資本主義社会での生き残りについても同時に大切だと語る、愛すべき台湾映画でした!最後、少年が大人になったシーン良かったよね!成功した建築家となり(老人の教え通り、厳しい社会を生き縫き)、カミソリの刃をちゃんとダンボールに包んでテープで留めて捨てる。「人のことを考える」大人に成長したね!

小津安二郎タッチの映画です。役者は敢えて大袈裟な感情表現をしない。全体として見てられる心地よい作品です。少年のオレンジの帽子を思い出すと涙出るな。

東京国際映画祭2023年 16本目
ルイまる子

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