のほほんさん

ヘル・レイザー 4Kデジタルリマスター版ののほほんさんのレビュー・感想・評価

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まさかこの作品を劇場で観ることが出来るとは…!
ビデオで観てた高校時代の私に教えてやりたい輝かしい未来である(笑)
なかなかDVD化されないから、よく買ったDVDに付いてるアンケートの円盤化希望作品として書いてたっけなあ。
そしてますます個人的な思い出としては、中学の時に行った韓国のホテルで、悪ガキどもがエロ期待で点けた深夜番組でやってたのが本作だった。
ズボン下ろしたとこまでは期待通りでしたがね(笑)


後に「血の本」などのいくつかのバーカー作品を読んだのだが、映像化されたものも含めた彼の作品に通底する魅力は、なんと言っても異形の者たちの存在感と、そんな彼らがいる異世界が我々のすぐ近くにある雰囲気だろうか。
庭の石をめくったら得体の知れぬ虫がわんさかいる、という感じ。
本作で言うとピンヘッド達は自宅や病院に出現するし、その手先の浮浪者が主人公の職場にやって来たりする。


魅力的な異形の者たち。
ホラーアイコンとなっているピンヘッドなんかは言うまでもなく素敵なんだが、創造主たるバーカーは彼らにベタついた愛を持っている感じはなくて、そこに存在する奴らを淡々と紹介するかのようなスタンス。
その距離感が、血も内臓も盛り沢山な作品たちの出来事を幻想とスタイリッシュの狭間に落とし込む。
起きてることはスプラッターなのに、そこに即物性はなく現実味とファンタジーのせめぎあいが唯一無二の世界に誘い込んでくる。
ダークファンタジーというのがバーカーの代名詞としてよく言われていてまさにその通りと思うけど、それでいて遠く離れた世界の話ではないのだね。


本作がユニークなのは、ピンヘッド達のような素敵なホラーキャラクターがいるにも関わらず、彼らを軸とした物語ではない点だと思う。
人間の浅ましさが彼らを呼び寄せ、その扉を開く。
歩く性欲の如きフランクと、彼に文字通り身も心も捧げたジュリア。


勝手な想像ながら、彼女はモテた過去を持つのだろう(昔だったら彼女に声をかけてくるのは、もっともっとカッコいい男たちだったはずだ)。そして思うようにいかなくなった頃に妥協する形でラリーと結婚したのだろう。その心の空虚(あるいは自尊心)を埋める形で現れたのがフランクだったのだろう。
だから彼女は理性を失うほどにフランクに依存した。


しかしフランクにとってはジュリアも性欲をぶつける相手に過ぎず、あっさりと若い娘に狙いを替える。ん?というか姪っこじゃねえか!なんという無節操。


そんな中で姪っこカースティ。性への恐れが死へのイメージとも結びついている。彼女の清純が他の連中のおぞましさと強い対照を成す。


「呼ばれて来たぞ」というのが今回の公開時のコピーになっていたが、本作のピンヘッド達のスタンスはまさにそれ。秀逸。


ピンヘッド達がカッコよくて登場するとテンション上がってしまうけど、それは別に私が歪んでいるからではないのよね(笑)
なんせ彼らは悪意によって出現したのではなくて、元々いるところにはいる存在だったのだから。
その辺が人間の恐怖を具現化したジェイソンやらフレディやらマイケルとは異なるところ。


フランクの破壊とその復活、数多くの流血シーン。今見れば確かにレトロなんだが、そのナマモノな感じはやはり魅力的。触れられる距離にある汚さ。


壁のタイル模様から光が漏れる、ピンヘッド一味の登場シーンは何度観ても良い。荘厳な音楽も、奴らの雰囲気にピッタリなのよね。
いやあ、劇場で観れて良かった!