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未帰還の友にのikumuraのレビュー・感想・評価

未帰還の友に(2023年製作の映画)
3.3
昔からの太宰ファンとしては、太宰原作の映画化はなんとなく連帯感が出てきて観ていて楽しくなる。

この話、実はよく覚えていなかったのだが、
戦時下、「先生」とよくつるんでいた帝大生がおでん屋の娘と仲良くなるも
南方へ出征することになり、、というストーリー。

低予算、しかも7日での強行ロケ、ということで手作り感は確かにあったけど、
太宰の言葉をそのままセリフに落とし込んで、
書き手としての太宰の、本音を見えなくさせる照れと裏腹に
読者に親近感を持たせてしまうところもそのまま伝わり、惹き込まれる。
悲壮なストーリーながら、間合いに若干の落語っぽさもあり。

ヒロインの母親役、おでん屋の女将さんを演じる蒼井染さんも昔から舞台で拝見しているのだが、
出てくると画面が引き締まって流石の空気感。

最終日ということもありほぼ満員、
監督を交えてのトークショーも太宰愛が感じられ、
作品にも太宰にも縁の深い武蔵野での上映にやはり深い感慨を覚えた。
時間がなくてできなかったが、足を伸ばして夕方の三鷹を散歩したかったなー。
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