花俟良王

FEAST -狂宴-の花俟良王のレビュー・感想・評価

FEAST -狂宴-(2022年製作の映画)
4.0
これはかなり混乱する作品だ。
貧乏な被害者家族が裕福な加害者家族の家で住み込みで働く。宣伝でもそうなってるがサスペンス要素は多分にある。だけどそういう展開にはならない。ある意味ハッピーエンドで、ある意味肩透かしだ。しかしこのまま受け取っていいのかと迷う。

余計に混乱させるのはキリスト教の教えが随所に出てくることで「そういうもんなのかなあ」と納得しようとする自分もいる。

しかし、あのラストの宴はどう見ても不自然だ(邦題の「狂宴」は決して盛ってないのだ)。贖罪を描くのであれば、あの被害者家族は同席すべきではないのか。

直前のシーンで豚が料理されていく。これらの料理を加害者家族は被害者家族に勧めることなく喜んで食べる。被害者家族は食べようとしない。設定上は普通のことではある。

しかし暗転した後に最後の聖書の引用が出る。「命は食物にまさり、着物は体にまさる」と。

結局、加害者家族は命の重みを感じていないのだ。これまでの親切の動機はすべて「保身」でなかったか。獄中で加害者側の父が聖書を教えているが、理由は早く出たいからであったし、終盤に唐突に差し込まれる若旦那が元妻に復縁を迫るシーンもその勝手さに合点がいく。結局のところ自分(と家族)のことだけを考えていると。

確かにこの作品は貧富の差や贖罪について描いている。それで完成されているように見えるので混乱するが、しかし本当に伝えたいのは人間の「欺瞞」なんだろうと思った。
花俟良王

花俟良王