Siesta

パーマネント・バケーションのSiestaのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

流石に尖りすぎていて驚く 映画の型をどこまで崩したら映画なのかと思ってしまう ジャームッシュ作品は初めて観たけど、この関節を外される感覚を楽しむのか、なるほど まさに、このクセ強アレンジの虹の彼方にのよう ただ、これは相当な上級者向けの映画だな 正直、個人的には面白いまでは思えなかった 主人公が本当にただ街を歩く姿を映しているだけ、でもドキュメンタリーとは違うというこの不思議なオフビート感 これを見ると、誰でも撮れてしまうような錯覚を起こすけど、絶対にそうはならないんだろうな このセンスと狂気は普通だったら、それ自体が目的化してしまって痛々しくなるんだろうけど、それがないんだよな 結果としてそれらが現出してくる感覚で
主人公アリーは清々しいほどの中二病 でも、彼のことも分かるというか 点と点を繋げて見えてくる絵に過ぎないという あくまでも、断片という 本当にその断片の脈絡のなさ、無意味さは本当に尖っている ただ、それらに対して自覚的な時点で、ドキュメンタリー=記録とは違う
スプレー缶で落書きして、自分は他人と違うことに対して、ニヒリスティックな陶酔を持っているアリー 部屋で踊り、街を彷徨い、母のいる精神病院、映画館の駄話、車泥棒、ニューヨークとの別れ 映画館で謎に「続・夕陽のガンマン」のオルゴール、モリコーネの音楽が流れているという小ネタ
この不思議なディストピア感は本当にセンスがないとできないんだろうな 一緒に暮らしていた女の子にタバコの向きを直されるところ、この無理に背伸びしてる感、それを呆れつつただ見守る大人びた女の子という些細なところも印象深い 最後に女の子は部屋にいない というか、途中でふと思ったけど、これらは全部アリーの妄想なのでは?とも 彼のパーソナリティからもその可能性大ありだなとも だって、出てくる人物のエッジ効きすぎだし、ディストピア感あるし
ラストでパーマネントバケーション、永遠の休暇という彼の性分 一つの場所にはいられないという そして、マンハッタンが遠くに離れゆくのをワンカットで見せるエンドロール ついこの間、ウディアレンのマンハッタンを見たばかりだから、マンハッタンのロゴまんまなんだなとマンハッタンの街並みを見て思った 個人的に、めちゃくちゃ良いなと思ったのが、船に乗る前の同年輩のパリから来た少年との会話 お互いにそれぞれの土地を悪くは言わないし、そもそも“移ろう”こと自体が目的であるというこの2人の感覚が好き 行きたいから行くんでなくて、移ろうことで、彷徨うことで、孤独の影に、退屈の影に追いつかれないようにするその人間の性と青さがとても人間的で素敵だと思った
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