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バッドランド・ハンターズのblacknessfallのレビュー・感想・評価

バッドランド・ハンターズ(2024年製作の映画)
3.9
みんな大好きマ・ドンソク映画。

これ、なんか勝手にドラマだと思い込んで観てた。とりあえず1話目観るかてノリで。
ドラマの割りに上映時間長いと思ったけど、まあ、韓国ドラマだしあるかなと気にしなかった。見始めたら、随分話進めるなー、大盤振る舞いだなー😆と喜んでたら、えっ!?ここまでやると話終るじゃんと不安になって解説チェックしたら映画だった笑
『イカゲーム』『今、私たちの学校は…』『マスクガール』とか傑作ドラマ多いから完全にドラマだと思ったんだよ。

大地震で社会が崩壊、『北斗の拳』『マッドマックス2』『マッドマックス 怒りのデスロード』化した世界で悪人に拐われた少女救いだすために戦うマ・ドンソク。要するにそういうヤツだ。

まあ、こういうストーリーなんで所謂、白ドンソク。気が良く強いおっさん。背景は明確にされてないがボクシング🥊をやってたこと、「俺は善良な人間じゃない」等のセリフから暴力の世界に身を置いた過去を匂わせる。

ドンソクと少女の距離感が『北斗の拳』のケンシロウとリンに非常に近いし、雑魚悪役のノリがヒャッハーモヒカンなんで、「これは痛快なヤツ」だと最初から安心感を約束してくれる。
悪の大ボスは水を確保し医師であるスキルを活かして生き残った軍人達を従えてコミューンの独裁者として君臨してる。この個人崇拝と水が権力の源泉になので『怒りのデスロード』っぽい。好きな人には堪らない世界観。

当然、ドンソクVS医師軍団になるんだけど、やはりドンソクの肉体的説得力は圧倒的で拳🤛で雑魚をどつき回す、大振りのナイフで軍人達を次々叩き切るシーンは圧巻でこのカタルシスはシュワルツェネッガーを想起させる。
実際、『コマンドー』辺りのシュワルツェネッガーを意識してるように感じた。相手を殺る前と殺った後にちょっとブラックなセリフを投下する。所謂、S.K.S(シュワ・キリング・スタイル)を採用してるシーンが数回あるから笑
今、こういう映画を成立させることができる俳優は世界的に見てもマ・ドンソクだけだと思う。時代に選ばれるよ。韓国なんておっさん俳優は名優の激戦区じゃん。でも、肉体派、肉弾系はいなかったんだよ。被りがないことで韓国から頭角を現すことができたわけだし。

全体的にハリウッドの娯楽アクション映画といった感じなんだけど、敵のボスが植物状態の娘を生き返らせることに執着して狂ってしまった医師で、人体実験のために子供を集めるところや、単純に暴力だけで支配するわけじゃなく子供達の親を子供の実験への貢献度、勉強の成果(実験を次世代に引き継ぐため教育もしてる)で水や食料の支給を引き上げるという実に資本主義的ないやらしさを使ってるところが韓国らしいと思った。
狂おしいまでの妄執、社会や家族制への鋭い批判。これらのダークで重苦しいテーマをドンソクの肉弾娯楽アクションに融合できるのは韓国映画の凄みだと思う。
ドンソクの活躍で全ての目論見が割れて子供の親達が医師をリンチし糾弾する。医師が彼等に向かって「子供を利用して贅沢してきたくせに今さらいい親ぶるな」と言い放つ。これが皮肉が効いてるのは親という視点だけで見ると培養液に漬けて心臓だけ動いてる上半身だけの娘を生き返らせるためにあらゆる悪事に手を染めた医師の方が誠実なことなんだよな。こういうところ手を抜かないのが大事なんだよ。娯楽映画でも必要な視点だ。物語の強度を増すために。
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