きゅうげん

マイノリティ・リポートのきゅうげんのレビュー・感想・評価

マイノリティ・リポート(2002年製作の映画)
3.6
原作フィリップ・K・ディック!
監督スティーブン・スピルバーグ!
主演トム・クルーズ!
2050年代のアメリカでは、予知能力者の出現と技術の革新により予防警察活動が可能となっており、不穏分子とされた人間は罪を犯す前に逮捕される……というディストピアもの。
不意打ちゲロ逃走とか、目隠ししながら腐った朝ご飯とか、自分の眼球で“おむすびころりん”とか、悪趣味スピルバーグ味は健在。セックスしてても喧嘩しててもトイレしてても、問答無用で網膜スキャン捜査される場面なんてホント最高です。あとヨガ教室のマヌケさたるや。

“マイノリティ・リポート”をめぐるサスペンスという点は原作準拠しつつも、「絶対的権力となった警察vsお払い箱になった軍隊」というマンガチックな構図は排され、お家騒動の対立軸が政治家や官僚などに改変されているところは、愛国者法に揺れた公開当時のアメリカ社会という背景がうかがえます。
ただ予知にからめたスリラーは、
①:殺人を犯すという報告
②:報告①に対し改変された報告
③:報告②に対し無効とする報告
という、登場人物たちが予知に接するがゆえに起きるパラドックス的な面白みに重点をおいた、原作の「3つとも“マイノリティ・リポート”だった!」オチの方が頭の良いミステリーな気がします。予知を踏まえて狂言……ってクライマックスとして弱くない?
それとウィットワー君はもちろん、部下も妻も何もかも敵か味方か分からない……という、ディックらしい“人間不信”テイストが薄れたのもちょっと残念。

ところで、いけすかないけど一理あるウィットワー君、若いコリン・ファレルがいい演技してますねぇ!
ほんと大好きな俳優さんです。
それとヤヌス・カミンスキーによる光と影!!!
……撮影がカッコよすぎ。
ちなみに胡散臭い技術者の経営するVR屋みたいなのは、本作が『トータル・リコール2』として企画されてた名残ってことでOK?