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マイノリティ・リポートのしゃにむのレビュー・感想・評価

マイノリティ・リポート(2002年製作の映画)
4.3
プリコグは電気ツチノコの夢を見るのか?(適当)
完璧という言葉に懐疑的な自分はますます疑り深くなりました。今作では殺人発生率0%が実現された近未来予想図が描かれます。プリコグという予知能力者の予言を基に犯罪予防局が犯罪をあらかじめ取り締まります。ここでは未遂や予備罪ではなく「未来」殺人というトンデモない刑罰が適用されますが、凶悪犯罪の発生しない世界は平和と呼ぶべきでしょう。近未来の理想社会です…だけど実のところどうなんだろうなァ?と懐疑的。

今作は最初から無機質な色合いと近未来のデザインとが合わさり息苦しい閉塞感があります。網膜認証で誰が何処にいるのか国家には手に取るようにわかる。プライバシーも何もない。一種の管理社会です。閉塞感の正体はこれでしょうか。うむむ、息苦しいな。

予言というのもそもそも胡散臭く思えます。何だか原始的。占いは必ず当たるでしょうか?天気予報は必ず当たるでしょうか?よく当たる、と評判だろうとも万に一回は外れることもあるはずです。一の目しかないサイコロを振るなら絶対一の目が出るでしょう。社会とは人間の集合体です。人間が完璧と言える存在ではないことは常々感じています。極めて不完全な人間同士が組織を、社会を作る時に「完璧」を求めることは不可能です。限りなく「完璧」に近づくことは出来るかもしれないけど。だから人間の介在するシステムが完全とか完璧とか謳われたら荒唐無稽に思えて仕方ない。むしろダメなところがある方が自然で許せる(許しちゃいけないけど)。

怖いなと思ったのはそんなありもしないシロモノを社会がすんなり受け入れようとしたことです。扇動されてないかな。なされるがままだ。多数派が少数派を実質的に殺すのは簡単。悪意のある多数派にとって少数派は無いにも等しい存在です。極めて無力。プリコグの予言が絶対だと言い張り都合の悪い意見は揉み消すことだって出来ますね。ちょうど多数派が少数派を揉み消す要領で。この作品で事件に巻き込まれた主人公はマイノリティーの立場に当たるのかな。真相を闇に葬る多数派、権利を侵害される少数派…さてさて理想とは…完璧とかそんな類の絵空事は寝て見るくらいがいいかもしれません。
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