映画大好きそーやさん

Rat Tat Tatの映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

Rat Tat Tat(2023年製作の映画)
2.8
見えない圧力の壁。
本作は、夫と共にとあるパーティーに出掛けた主人公が、謎の拍手に煽られながら恐怖体験に身を落としていくお話です。
『NN4444』として劇場公開された際に本作を観たのですが、ルックや空気感は他の3作品よりもゴージャスかつ重厚感があって良かったです。
説明が殆ど入らず、雰囲気だけで押し切られている感覚はあれど、描いていることはかなりシンプルだったと思います。
皆さんのレビューでも散見されましたが、一言で言えば大多数が決定付ける同調圧力の恐怖と、その波に乗れなかった者の末路でしょう。
ただ本作はそのテーマ性、不条理性に辿り着くために、出産や果ての流産を取り扱っており、この兼ね合いは如何なものかと感じてしまいました。
そこを同列で見てしまうのは、これまで1度でも出産や流産を経験している人はどう思うのだろうと、その点の危うさはあったように思います。(私自身は男ですし、そういった経験をされた人の思いは計り知れませんが……)
主人公が逃げ場をなくされ、追い詰められていく過程を楽しんでしまった自分もいて、何とも気持ちの悪い鑑賞後感であったことを覚えています。
話が前後しますが、説明が殆ど入らないことで最も気になったのは老婆の存在でしょう。
正体が何であるか、様々考えられると思いますが、個人的には主人公と同じ末路を辿った霊なのではないかと考えました。
同調圧力、或いは妊娠、出産への周囲からの期待感、プレッシャーに押し潰され、最悪の末路を辿った。同じような状況下で、追い詰められ終わりが近付いた主人公を嘲笑い、こっちへおいでと手招きする存在として配置されていたのかなと思考を巡らせてみました。
他にも色々と考えられる余地もあるでしょうから、皆さんの意見もぜひ聞いてみたいです。
総じて、倫理観と言うのでしょうか、やっていいこと悪いことの線引きに危うさは感じつつも、見せ方には一定の評価ができる作品でした!