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トラペジウムのRickのレビュー・感想・評価

トラペジウム(2024年製作の映画)
4.2
 AKB的アイドルがアニメで描かれるようになって早くも十余年。キラキラした世界だけではない、いわゆる業界の闇なども作品内に登場するようになった。とはいえ、アイドルを扱う諸作品がアイドルの存在を絶対視し、疑うことをしなかった。もちろんそのIPの声優アイドルグループを続けることが前提なので、そこを諦めるわけには行かないのだが。今作『トラペジウム』はそのどれとも違う、異色で若干歪な作品である。アイドルに執着を抱く少女と、その願望に振り回される友人3人の、アイドル活動を通した青春ストーリー。
 前半はリアリティラインがわからず、ただ東ゆうの暴走に振り回され、進むべき方向を見誤りそうになるが、後半になるにつれ、とんだ珍道中の中にもキャラクターに愛着が湧いてくるもので、フォーカスされる感情に乗れるようになってくる。別にアイドルでなくても良い、ただ何かに夢中になって視野狭窄になり、周りが見えなくなった経験があるならば、側から見ると痛々しい行動も共感しないまでも納得できるようになる。誰もがそうやって、自分の世界にも他者がいることを知るのだ。そうして幼年期は終わりを告げ、自分の輪郭が漸く見えてくる。
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