Rick

海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版のRickのレビュー・感想・評価

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 何度も見ている。セリフもある程度覚えている。エンニオ・モリコーネのサントラも繰り返し聴いた。原作の戯曲だって読んだ。それでもこの作品が良い作品と言ってもいいのか、もはや判別がつかないのだ。船の上で生まれ育ち、一度も陸へ降りたことのないダニー・ブートマン・T.D.レモン・1900の数奇な運命を描く寓話である。最初に見た時はあまりピンと来なかった。2度目に見た時に、もしかしたら自分のための作品なんじゃないかと思った。銀幕の中の1900に自分を重ね合わせることが出来た。外の世界の無限さに恐れ慄く気持ちや、何かをきっかけに外へと踏み出しても良い気がしてくる芯の弱さと憧れ、自らの弱さを自覚して逆に吹っ切れる感じ、どれも知ってる、どれも経験してきた。自分を描いてくれたような気がして、救いにも感じた。それから何年も経って、見返すたびに1900の中に自分を探す。まだこの作品を見て安心できるのか、それとももはやそこに自分はいないのか、確かめるように。
リアルタイムで見るにはあまりに幼く、DVDで見てきたが、ようやく劇場で鑑賞するに至った。綺麗になった画面に映るヴァージニア号の船内に見惚れ、モリコーネのplaying loveに聞き惚れる。同時に大画面で見るからこそ気づくこともある。マックスの目はこんなにも動いていたのか、あの娘さんの前にはこんなにも分厚いガラスがあったのか、なんか変なタイミングでのカットなんてあったっけetc.。まだまだ見るべきものがあった。1900との旅路はもう少し続きそうだ。
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