今は過去の集積の上にある。過去の出来事は必ず現在に影響を及ぼし、現在は未来への布石となる。他者と過去に出会い、浅からぬ関係を築いたら、その後の思考はその人がいなかった頃には戻れない。でも残酷な事に、>>続きを読む
今いる世界は、1945年7月16日を通ってきた世界だ。“原爆の父”ロバート・オッペンハイマー率いる専門家集団がロスアラモスでトリニティ実験を成功させたその日から、核爆弾が存在する世界になってしまった>>続きを読む
何度も見ている。セリフもある程度覚えている。エンニオ・モリコーネのサントラも繰り返し聴いた。原作の戯曲だって読んだ。それでもこの作品が良い作品と言ってもいいのか、もはや判別がつかないのだ。船の上で生>>続きを読む
マジョリティのマジョリティによるマジョリティのためのアメリカン・ドリームが潰えた現代では、マイノリティのマイノリティによるマジョリティのためのアメリカン・フィクションが顔を覗かせている。マジョリティ>>続きを読む
どれだけ夜に想いを馳せたことがあるだろうか。その静寂を、その暗闇を、微かに灯る道標を、人はどのくらい知っているだろうか。明るい場所にいることを求めてしまう人の方が多いかもしれない。落ち込んだところに>>続きを読む
人は皆、自分の居場所を探して生きている。そんなものが、存在するかもわからないけれども。いろいろな世界に触れていくうちに、居心地が良いところもあれば、なんだか合わないな、いるだけで疲れるなというところ>>続きを読む
人は最初に触れたガンダムのことを親だと思ってついて行くということは、よく知られた真実である。しかし長い年月が経って成人する頃にもなると、親のおや?と思う部分も見えてきてしまう。結論から言おう、親に久>>続きを読む
生まれ落ちた瞬間には何も知らない哀れなるものたちよ。汝、全てを体験せよ。喜びも悦びも、裏切りも信頼も、痛みも暴力も、怒りも失望も、知も優しさも、全てその身で経験せよ。懇切丁寧に「正解」や「世界」を教>>続きを読む
アイヌの埋蔵金、網走監獄の囚人たち、刺青人皮、老いた武士、熊、狼、血飛沫、不死身の男、そしてもひとつ熊。陰謀と狂気が渦巻くワクワクが止まらないハイテンション和製ウェスタンの金字塔が原作とあらば、その>>続きを読む
子どもの世界には、もちろん楽しいことも溢れている。美味しいものを食べたり、友達と遊んだり、家族と触れ合ったり。でもそれと同じくらい厳しい側面も目撃して、その度きちんと考えて、学んでいる。生きることと>>続きを読む
ナポレオンと聞いて、思い浮かべるのは馬に乗り高く手を掲げアルプスを越えんとする勇ましい姿か。それとも、なんとも言えない面持ちで書斎に佇む男の姿であろうか。不可能の文字など存在しないかのように振る舞う>>続きを読む
搾取する者たちが語る美談が席巻する中で、踏み躙られた者、奪われた者、虐げられた者たちの魂や物語は蓋をされ、なかったことにされてしまう。その「弱きものたち」を語り継ぎ、忘れないようにするための抵抗の手>>続きを読む
某-1.0と比較するために見なければと思ったという不純極まりない態度で臨む、ゴジラ。やっぱり同じ金子修介監督だけあって、どこか平成ガメラを彷彿とさせるところもある。こちとら平成ガメラで大きくなってし>>続きを読む
カジモド以上に強烈な印象を残すフロロー。ただただ気持ち悪いのだが、妙に生々しく嫌悪感を抱かせる。禁欲的で非人間的で公正な外面を持ちながらも、その内実は嫉妬心と情欲の地獄の業火を燃えたぎらせるただのオ>>続きを読む
仕事を始める特に、昔からの「夢」ややりたかったこと度直球のことをできる人はどのくらいいるのだろうか。でも世の中には「好きを仕事に」や、長年の夢を違わずに持ち続け成就させることを無闇に称揚する空気感が>>続きを読む
人は皆何かの役を演じている。取り繕って、嘘ついて、何かを諦めて、無かった事にして。そんな無かったことにされた人たち、ものたちでさえ、カメラの前では皆平等に顕になってしまう。誤魔化しや偽善に疲れ切った>>続きを読む
2016年にゴジラ(1954)の現代的リメイクとしての「正解」を出されてしまった以上、現代ではなく過去を、それも戦後直後を舞台にしたことは慧眼であった。自衛隊がまだ存在せず、碌な武装も持たない中で、>>続きを読む
因習村ものかと思いきや、こっち方向かなと思いきや、あっち方向だったと言う60分のコンパクトなホラーコメディ...?他所は他所、うちはうちで殺されるのも本当に嫌で仕方がないが、にしてもこの監督、死が軽>>続きを読む
愛されるために生まれた「永遠の子ども」は、他でもない母親からの愛を求めて彷徨い続ける。ほんものの人間の子どもになれるよう祈り続ける。忠告してくれる良心のクマをお供に、危険なサーカスへ、大人の街へ、そ>>続きを読む
「知っている」ということと、「わかっている」ということは同じようで、その実は全く異なる。こんな経歴がある、こんなことを経験したという、その人の客観的な履歴を知っているからと言って、何をどう感じている>>続きを読む
映画とは、なんと罪深いものか。人を楽しませ、人を感動させ、時には怒らせ、魂を浄化させ、傷つけ、癒し、勇気づける。映画の魔力は底知れず、観る人だけでなく、撮る人をも飲み込み、一生涯くくりつけてしまう。>>続きを読む
いやはや最高の青春映画じゃないか。人はめっちゃ死ぬし、意味わからんくらい強い奴でもてくるけど。高校から社会に出て、守ってくれる存在がなくなった時に、新たな場所にどうコミットしていくのか。殺しは日常で>>続きを読む
変化と成長とは、必ずしもイコールではない。だからと言って変化が全て悪いわけでもない。けれども身勝手なもので、変わる前と変わった後を天秤に掛け、やれ昔はよかった、今は昔ほど輝いていないなどと思ったり、>>続きを読む
青春の、恋の、人間の痛々しさを描かせたら、本当に嫌な痛々しさを描く岡田麿里の最新作だが、必ずしも岡田麿里の作劇やニュアンスが好きでもないので、今回も不安だったが、結果的にも好みではなかった。ただある>>続きを読む
水は海に向かって流れる。そんな疑いようもないただの真実のように、時間は過ぎて行き、最終的にものごとは収まるところへ収まるものだ。けれども、それで全て納得しろというのも難しいことだってある。親の不倫と>>続きを読む
管制室からトム少佐へ。昼間の地球と夜の宇宙を彷徨う2人の、声を介したささやかな秘密の交流を10分という短い時間に詰め込んだ青春作品。キャラクター設定が驚くほどステレオタイプで陳腐ではあるが、その見せ>>続きを読む
叛逆の物語。世界という「システム」への叛逆。自己犠牲を是とする秩序への叛逆。どこまでも優しくてあまりにも繊細すぎる人たちへの叛逆。テレビシリーズである意味丸く終わったにも拘わらず、それをひっくり返す>>続きを読む
「女の子用のおもちゃ」といえば赤ちゃんの人形くらいしか無かった頃に、突如現れたバービー人形は決定的に全てを変えた。どんな職業にも就けるし、何にだってなれると。しかしそれから時代は下り、価値観も移ろい>>続きを読む
幾つになったって、どんな社会階層にいたって、着たいものがあるならば着ればいい。そんな現代的な価値観のもとでは、ミセス・ハリスの覚悟や行動力は捉えきれないのかもしれない。1957年に通いの家政婦である>>続きを読む
新部長、黄前久美子の初仕事。なかなか他者に踏み込むことがなかった人であったとしても、役職を割り振られたからには変わらざるを得ない。利害関係の調整、うまく行っていない人のフォロー、気配り心配り。吹奏楽>>続きを読む
自分の為したことに自信を持てなかったり、自分の不甲斐なさに涙したり。自意識と呼ばれるものに翻弄されることなんて、案外どれだけ歳を重ねようともそんなに変わらないんじゃないだろうか。その経験があるから今>>続きを読む
今ここで終わる物語と、これからどこかで始まる物語は、本質的には無関係なものであろう。たとえ前の物語から何かを得たとしても、全てはいつか忘れてしまって、次の物語には何も残らないのかもしれない。でも、そ>>続きを読む
我々は過去のロマンに縛られている。あの時の興奮やあの時の冒険に今もまだ固執している。でも時代は流れる。自然と歳をとっていく。体は思うようには動かず、いろんな悲しみも知って、心も昔みたいに無鉄砲ではい>>続きを読む
見届けようぜ。歴史に残らなかった人たちの迎えた結末を。聞き届けようぜ。歴史の波に埋もれてしまった人々の声を。共に歌おうぜ。彼らがここにいたことを。そして我々が今ここに生きていることを。
申学能の名>>続きを読む