イスケ

RHEINGOLD ラインゴールドのイスケのネタバレレビュー・内容・結末

RHEINGOLD ラインゴールド(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ドクター・ドレーも医者だと思われてるうちはまだまだやな。

「今は更生して成功しました」という教訓めいたところが一切ないのが潔くて好きでした!悪はワルのまま成功する。

それゆえに物語は、普遍的な形に落とし込まれているわけではなく、カターの個人的な人生の話でしかないのだけど、誰もが心当たりのある物語なんて世に溢れているのだから、こういう歪な人生体験を身近に感じさせてくれる作品って、存在してるだけで意味あるよなって思った。一人一人の人生こそがゴールドなんだよと。(うまいこと言ったとは少しも思っていない)

金塊強盗まで突き進んでしまう人生はさすがにぶっ飛びすぎていて、これがフィクションだったらここまで面白さを感じなかっただろうなぁ。
大谷翔平を漫画にしたら「んなワケあるかい!」と一蹴されてしまうのと同じような効果が、「実話ベース」という魔法によって担保されていて、作品の魅力を100倍増幅させてくれていた。時系列の扱い方も非常に秀逸でね。


やっぱりクライマックスとなるのは、カターが歩んできた道のりを書いたリリックが曲に乗る最後の20分ほど!

「お前の人生にはすべて意味があったんだよ」と言わんばかりに、まるで伏線回収のように一つの曲のリリックにまとまっていく様子が最高だった。
なんならリリックだけではなく、トラックも父と少年期のカターがベースになっているのがまた何とも言えない感動を呼ぶんだよ。

父が音楽家じゃなかったら。
ピアノを弾けなかったら。
コードを理解できていなかったら。
トラックメイカーの部屋での出来事から物事は進まなかったと思うし、歩んできた人生だけではなくバックボーンまで取り込みながら、それらが自分の人生の中で回収されていく。


黎明期からHIPHOPが好きなので、不遇だった自らの境遇をリリックに乗せたギャングスタラップは数多聴いているけれど、カターの濃密すぎる人生がギュッと一曲に詰まっているのを体感してみると、これまでの聴き方がいかに浅かったかということを感じずにはいられなかったですね。リリックの背景にはこんなにも多くの人間との関わりや歴史があるんだなって。

同時に、ガキ使の笑ってはいけないシリーズのエンディングもこんなんだったなと思い出しました。


瓶を割ってしまってアタフタするくだりは笑えたし、ハラハラしたわーw
酒屋のバイトとはワケが違いますからねw

そこから金塊強盗にいっちゃうのも含め、カターの人生は行き当たりばったり感に溢れているのよ。
でも、そこに成り上がろうという強い意志があるから、この人の人生には魅力を感じるんだろな。

とかく過去や未来に気を取られるあまりに今を疎かにしがちな現代人にとっては、彼のこういう本気度合いに学ぶべきところは見出せるのかもしれないね。
計画性って本来持ってる牙を抜いてしまう行為でもあるんだよきっと。


溜飲下がりまくりの復讐シーンも楽しかった。
スーパーマリオの2D画面のような、駅での復讐が気持ちいい〜!

自分もあのオッチャンから喧嘩の仕方を習いたかったわ。
鼻は正面を突くんじゃなくて、上に突き上げる。メモメモ。
イスケ

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