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水深ゼロメートルからのyoshi44のレビュー・感想・評価

水深ゼロメートルから(2024年製作の映画)
3.6
2020年の年間ランキング第2位にした傑作『アルプススタンドのはしの方』と同じく、高校演劇を映画化した本作。
オリジナルを演じたのは徳島市立高等学校演劇部。脚本の中田夢花は執筆当時、高校三年生だったとのこと。

居残りをしている高校生たちの他愛のない会話が徐々に彼女たちの夢や希望や鬱屈を炙り出し、ラストカットは今年最高の切れ味を持つ。

オリジナルが徳島県で演じられたこともまたこの作品の本懐で、阿波踊りにそんな“ジェンダー問題”的な要素があるなんて全く思いもしなかった。

『アルプススタンドのはしの方』と違って男子の要素が全くないので、感情移入の度合いで言うと物足りなかったのが本音ではある。
でも高校生のこの時、この瞬間でしか産み出されることのない感情が胸に響く。
登場人物の誰の言うことも正しくて正しくなくて、でもそれは彼女たちの心の叫びなのだから全て真実なんだ。

水のないプールに積もる砂。
掃いても掃いてもなくならないそれらは、まるで日々の不安や不満が文字通り積もっていくようで。

高校演劇の世界は、甲子園に負けないくらい熱く燃えているという。
もっとたくさんのメディアで取り上げてほしい。
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