映画大好きそーやさん

ブルーイマジンの映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

ブルーイマジン(2024年製作の映画)
3.6
性加害、ハラスメント被害者の功罪。
上映最終日にギリギリ滑り込みで鑑賞できた作品です。
結論から言うと、切り込んだテーマ性の良さは買いますが、全体としては微妙な出来でした。
性加害、性暴力は昨今のメジャーなテーマであり、海外では『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』や『ウーマン・トーキング 私たちの選択』等々、果敢に作品が作られています。
今年公開された『コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ー』も、その潮流の1本と言えるでしょう。
そのような流れの中で、日本でも同テーマの作品が作られたというのは感慨深く、とても大きな意義があったと思います。
作中では性加害の他にも、上司からハラスメントを受けたとして男性キャラクターも物語に絡んできます。
一言に性加害と言っても、映画業界の新人俳優に対するものであったり、パパ活であったりと、様々な分野や状況で苦しんでいる女性たちが登場し、問題の奥深さを私たち観客に否が応でも突き付けてきます。
数多のキャラクターがブルーイマジンというシェアハウスに集まることで、一面的でない、多方面からの問題提起ができているのは偉いなと思いました。(男性キャラクターも女性しかいないシェアハウスに合流するので、制作陣は地続きの問題として考えているということでしょうか?心理的苦痛には、差と言うと語弊がありますが、違いがありそうな気がします。ぜひこの辺りは、皆さんの意見もお聞きしたいです)
また、それらの問題を雑誌のネタとして取り上げる記者たちの冷たい視点は、所詮商売としか考えていない非情さ、無情さをヒシヒシと感じ、その辺りの描写も皮肉が効いていてとても良かったです。
あと、特にパパ活女子の話で顕著に描かれていた、女性側の浅はかさと言うと角が立ちますが、付け入る隙があったのではないかというところにまで視線が向けられていたのも印象的で、ただ性加害を描くだけでない、1歩先の女性映画として、本作は独自の立ち位置を確立できていたと思います。
ただ、ですね。
シェアハウスには何人かメインキャラクターと言ってもいいキャラクターたちがいるのに、主人公とパパ活女子くらいしかちゃんとした掘り下げがなされておらず、せっかくのキャラクターが勿体ないなと思ってしまいました。
きっとそれぞれ辛い過去を背負っていながら、それでもこのブルーイマジンにやって来て、皆と共にささやかな幸せを感じる日々を送っている筈なのに、そんな彼女たちに殆ど焦点を当てないのは、多面的なアプローチを目指している本作においてはどうなのでしょうか?
他にも、指導者的な立場の人がブルーイマジンにやって来た女性たちの話を聞き、迎え入れるのですが、その指導者に関するバックボーンも全く描かれないので、結局のところ制作陣の主張のためだけに動かされているキャラクターに見え、そこも残念に感じました。
あと、これは些細な点かもしれないのですが、編集の段階でなってしまったのか、音声が高頻度でプツリプツリと切れていて、かなりのノイズで不快感を覚えました。
もし、演出としてしているんでしたらすみません。私には合いませんでした。
そして、これが最大の問題なのですが、クライマックス、カタルシスの最高潮にあたる記者会見のシークエンスには、違和感しか覚えませんでした。
記者たちが質問していたが、なぜ1社も自分がどこの会社なり誌から来たかを言わないのか、なぜ記者ばかりの会見場に一般人の主人公たちが入れていたのか等々、所々に頭を捻る箇所があって、盛り上がる筈なのに気持ちはずっと冷静でした。
主人公が性加害を受けた映画監督に対して思いをぶちまける場面(というか、その一連の流れ)は、どこか説教臭く女性的な視点に立ち過ぎている気がしていて、その点に対するフォローがあっても良かったのかなとも思いました。(その意味でラーメン屋で駄弁る記者のシーンを挿れたのかもしれませんが、だとしたら答えとして的外れだし、不十分だという……)
総じて、性加害を受けた被害者を批評的に見つめる視線は良かったものの、最後は偏りが生まれバランスが崩れてしまった作品でした!