dm10forever

新凱旋門のdm10foreverのレビュー・感想・評価

新凱旋門(2023年製作の映画)
3.5
【温故知新】


MyFFF2024にて。

時代と共に少しずつ変わっていく街の表情。
しかし、それはまるで「アハ体験」のように、意識していない人にとっては「いつ」「何が」変わったのか、意外と気が付かないものなのかもしれない。

変わり行く摩天楼を描くために新しい町に訪れる主人公。
しかし、彼女以外に誰もその「変化」を気に止めるものはいない。

そこでは誰一人として立ち止まるものはなく、それは移ろい行く街の風景と呼応するかのような「静か」で「寂しい」光景でもあった。

そんな街を訪れた主人公は「ラ・ディファレス」に足を運ぶ。
そこは欧州最大の野外美術館。
そして、同時にそこは、移ろい行く風景の中でその流れに逆らうかのように同じ形を保ち続けるものの象徴でもあるかのような場所でもあった。

そんな中、新たに建造された「新凱旋門」の元で裸足で眠っている一人の男を見つける主人公。
それは「動」とそれに抗う「静」のような対照的な存在にも映る。

数日間の観察を通して徐々に男への理解が深まっていく様子を、男の体の輪郭までもはっきりと描かくことで表していたのはなかなかうまい表現だなと思った。

少しずつ移ろっていく街の中で、一人立ち止まる男。
しかし、彼だけが「生」を表現しているかのように色を持ち始める。

やがて彼は自分と同じように「時の流れに抗っていた美術品」達にも「生」を与え、まるで行進をするかのようにこの街を去っていく。

古きものはいつかその役目を終え、また新しいものへとその場所を譲りながら、今日も静かに動いている。

自分でも気がつかないくらいに、ゆっくりとゆっくりと変わっていくいろんな事、もの、ひと、気持ち・・・。
ふと立ち止まって考えてみたら、僕が住む札幌も随分と変わったような気がする。
そういえば、あのホテルが建つ前ってあそこは何があったっけ?
そんな場所がどんどん増えてくる。

何気なく通りすぎると気にならないけど、たまには立ち止まってみるのもいいかもしれない。
dm10forever

dm10forever