花火

成功したオタクの花火のネタバレレビュー・内容・結末

成功したオタク(2021年製作の映画)
1.4

このレビューはネタバレを含みます

観ていて妙な既視感を覚えたのだが、これはつまりあれだ。推し活という題材が真新しく見えるだけで(しかし結局のところこれは「信仰の揺らぎ」を意味しているので題材自体も古臭いのでは?)、実質的には90年代後半から2000年代にかけて大流行した私的ドキュメンタリー、しかも「自分探し」系のそれではなかろうか。当事者が監督であるゆえに対象に対して適切な距離を取れず、結果としてものすごく中途半端というか、映画館でかけるべき作品になったとは到底思えない(いそぎ断っておくが、当事者が作品を作ることそのものが問題なわけではない。『シリア・モナムール』『娘は戦場で生まれた』『リトル・パレスティナ』など、シリア情勢を扱った映画には当事者が監督した優れた映画がいくらでも見つけられるし、東日本大震災の津波で妹を失い自身も被災した佐藤そのみ監督の映画も素晴らしかった)。とりわけ監督がカメラの前で写っていることがしばしばあるため、そのカメラポジションは本当に正しいのかと思う画面が多々見受けられた。グッズ葬式の向かい合って座る二人を斜めからの切り返しカットとか、被写体の動きを抑えるようで画面としてつまらないし。ファンダムという集団ではなくファン個々人を撮りたいという意図があったようだが、それぞれのインタビューは編集で部分部分に切り刻まれているため、声=人物像として立ち上がってこないのが相当厳しい。朴槿恵の応援集会に突撃するパート、あんな分量で入れる必要あるか?佐藤真の言葉を借りるなら、「高度な映画的戦略と編集上の戦術」に欠いた作品だと思えてならなかった。
とはいえ普段イメフォに来ないんだろうなという客層で満席だったことは気分が良かった。どんな映画であれ、当たらないよりは当たった方がいい。
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