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室町無頼のodyssのレビュー・感想・評価

室町無頼(2024年製作の映画)
3.2
【国家権力が弱いからこそ乱世になるのだが】

予告編からして違和感がありました。
「国家権力に立ち向かう」という触れ込みですけど、室町時代は国家権力がきわめて弱かった時代です。
だからこそ、色々な勢力が濫立して乱世になるわけで、逆に徳川時代のように権力が強ければ安定して平和な世の中が続くわけです。

映画だし、そういうことはどうでもいいと言ってしまえばそれまでですけどね。
でも、この映画の構図「権力が腐敗して、民衆は苦しむだけ」って設定は、いささか安易じゃないかと思うわけ。

中では長尾謙杜が演じる才蔵が精彩を放っていました。色々と試練をへて戦闘力を身につけるところが、面白い。

女との関係も含めて、そのあたりをもっと突き詰めていれば面白くなったかも。
この映画は、女の描き方が(その気になれば色々な可能性がありそうだったのに)きわめて不十分です。

あと、ラストで戦闘シーンが「ええじゃないか」に移行するあたりも、一見するとカタルシスのように思えますが、それまでの悲惨な設定からすれば、「考えてないんじゃないの?」という印象を免れませんでした。

監督が監督だから、考えないのも仕方がないかな、と言っておきましょう。
最近の日本映画は、知性のある映画監督が減っていますね。
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