同じようなテーマを扱った『She Said』『スキャンダル』と違うのは、こうした作品で描かれた「権力からの圧力や妨害との闘い」という要素がスッポリ抜けていること。
それもそのはずで、BBCによる彼へのインタビューとその放送を「彼の母親」があっさりオッケーしてしまったから。きっと彼女は、愚息オブ愚息であるこの次男坊に早々に見切りをつけ、王室のダメージコントロールを優先させ、母親よりも女王としての役目を優先したのだろう。映画では殆どスルーされているけど、個人的にはココも描いて欲しかった。
そんなワケで本作は、社会派ドラマの要素はほぼ皆無で、インタビューにまつわるコミュニケーションや交渉術の部分が描かれてはいるが、いかんせんかなり中途半端。登場人物の掘り下げが適当で、感動させるために盛り込まれた浅薄な演出が邪魔をしている。
そんな中、ルーファス・シーウェルの、本人にしか見えないなりきり演技だけが救い。その素晴らしさは、奇しくも同じ英国王室を描いた『ザ・クラウン』でゴールデングローブ受賞の名演を魅せたジリアン・アンダーソンの存在が霞むほど。