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まるのmatsucoのネタバレレビュー・内容・結末

まる(2024年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

予告編をみて、面白そうに作られてる予告編だなぁ、さすが予告編だなぁと思いつつ、このままの通りの感じだったらすこしいやだなとも思いながら観に行きました。

実際はとても良い雰囲気でした。雑なシーンとかはなく、ずっとセンセーショナルな事が起き続ける描かれ方ではないちょいちょい日常にも戻してくれる感じが、リアルで良かった。ファンタジーや妄想・空想要素が出てきても、ちゃんとストーリーの筋や主人公沢田の心の中が見て取れるものだったので、ただのアートムービーになったりもしなくて、そこもこの作品のいいところ。

キャラクター達。主人公の沢田、生活に対して力が入ってない感じだけど絵に対してはやっぱり熱い想いを持っててかなりいい。そしてさらに、沢田以外のキャラクター、魅力的な個性的な人がたくさん出てきます。少し変な人が多いんだけど、どのキャラクターのセリフも行動も、心にぐさぐさ差さる差さる。しかも、人間らしさもかわいらしさも、哀愁も持ち合わせてて…。隣に住むデビュー出来ない漫画家、ミャンマー出身のコンビニバイトの先輩、公園で出会う茶道の偉い先生、元職場の格差社会を訴える女の人、草間彌生ぽい髪型のギャラリーオーナー、おしゃれな胡散臭いスーツが似合い過ぎる有名アートディーラー、明らかに変だけどなんかいそうな古道具屋店主、他にも、とにかく沢山出て来る。ひとりひとりの役者さん、見た目から何から、その役の人物になり過ぎていて凄い…。綾野剛の横山良かったなぁぁ、久々に私の好きな綾野剛リストに追加入りました◎
てか、現代美術家と漫画家が住むアパートとか私も住みたい。超良い。あの2人のやり取り毎度好きだった。最後のあのオンラインでコラボの会話のくだりなんてもうかわいすぎる。ぐっと来すぎる。小林聡美もめっっちゃ良かったなぁ。森崎ウィン演じるコンビニの先輩もいとおしかった。ひとりひとり挙げるとキリが無いねん…。荻上監督、すごいなあ。

やたらと評価されることになった主人公の描くまるもそうだけど、芸術って見る人によって物凄く価値があったり、1ミリも価値を感じなかったりするのが奥が深くて面白いね。オーナーやディーラーが沢田の描いた絵を見て、ほう…と感動するシーンは、芸術の奥深さとその逆の滑稽さが滲み出てて、いいシーンだけどどこかおかしくて、好きだったなあ。美術館に沢田のまるを見に来る人たちも、本気で絵が好きな人もいれば絵を見にきてる自分が好きな人(私もまさにそう)など絶対入り混じってて、それもまた面白かった。私は芸術家ぽいひともミーハーぽい人もどっちも好きなので。何か好きなものがある人が単純に好きだから。

あと、そのやたらとフューチャーされるまるを描く沢田のシーンが何度も出て来るんだけど、それがめちゃくちゃ気持ち良い。とくに一番最初に動くアリの周りに壁を作るように描き出す沢田のまる。白いキャンバスに大きめのふででざざっ…と描くあの感じとあの音が、冗談抜きでずっと見てられるわ!だった。気持ち良い〜。人が絵描いてるのとかなんか作ってるのってずっと見てられるね。ASMRじゃないけど音も感じてたいね。久々にアルキメデス観て黒板に字書く音も聴きたくなった。

エンドロールも相当しびれた。粋だよありゃあ…。剛の歌声よ…。絶対映画館で観るべき、聴くべき!

良い映画が観れて、心があつくなりました。良い夜だった。
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