ベビーパウダー山崎

インフェルノのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

インフェルノ(1980年製作の映画)
4.0
鏡が割れて真正面から骸骨の死神が現れたら結構怖い。大作にしては台詞が極端に少なく漠然としたイメージを繋げての視覚の映画だが、ここ一番は直球勝負。物語が知らぬ間に滑り出していて中心の人物がころころと変わるのはある意味今っぽい。前にも後ろにも進まない話で死(殺される姿)を目撃するために視点が移る。常識が通用しない世界かと思って油断していると警察や救急車が景色程度に映るのでギョッとしたりもする。社会秩序が機能したうえでのカオス。ネズミに食われる足の悪い老人は自業自得。蟻に猫やネズミ、ショックとしての生き物の見せ方はルチオ・フルチのほうが上手い気がする。
ダリオ・アルジェントが倒れたときマリオ・バーヴァが代わりに監督していたらしいが、どことなくNYでの姉のくだりは古典的な恐怖映画の香りがする。サディスティックな音楽が鳴り響き、どこまで広いのか果てしない迷路のような建物内。始まりはひっそりと水中に潜り、なにもかも燃やし尽くす炎で終わる。水と火、アルジェントが描く地獄。