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誰も守ってくれないのlunesのレビュー・感想・評価

誰も守ってくれない(2008年製作の映画)
2.6
15歳の女子高生の兄が殺人事件で逮捕され、家族の生活が一変する。
押し寄せるマスコミに、ネット上での中傷に個人情報の暴露。そんな『世論』から加害者家族を守る警察官の話。



確かに凶悪事件を起こした人間の家族だからと言って、ありとあらゆる情報を公開しようとするマスコミは許されるものでは無い。
罪を犯したのは当人であって、その罪の責任を家族にまで広げようとするコメンテーターやメディアも的外れだ。
基本的人権はたとえ加害者の家族であっても尊重されるし、それが法治国家というものだ。



しかし、結局一番苦しむのは被害者と遺族に他ならない。
愛するものを奪われた上、一生消える事の無い悲しみを背負って生きて行かなければならないからだ。

今作は加害者の家族に焦点が当てられており、突如として社会が自分達に牙を向く様子が切々と描かれている。


脚本と製作が『踊る大捜査線』シリーズのタッグという事で踊るの社会派版ということになるが、社会派と呼ぶには中身にはどうもムラがある。
リアリティに徹した描写と、ありえない設定が混在しているからだ。

例えば前半のガサのシーンなどは、手持ちカメラで緊張感を煽っているし、テンポも硬質でとてもいい。


逆に、松田龍平演じるピアス警察官はどう考えてもいないし、木村佳乃が謎の精神科医で登場、ネット世界が現実社会にまで浸食してくる様を描いたホテルでの乱闘など、
「なんだそれは」
とツッコミたくなる場面が多い。

作品全体としては、現実に起こりえる事だし報道のあり方の問題提起をしているように見えるが、ここまでやるとホラー映画だ。


なかなかの力作だとは思うが、社会派としてみれば合格とは言いがたい。
(2012/1/4)
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