GreenT

サンセット大通りのGreenTのレビュー・感想・評価

サンセット大通り(1950年製作の映画)
2.5
ハリウッドで脚本家をしているジョーは、仕事が無くて借金取りに追われる毎日を送っている。ある日ひょんなことから、サンセット大通りにある寂れた豪邸に迷い込み、そこに住む往年の大女優、ノーマ・デズモンドの若いツバメとなるが・・・・

古い白黒映画って、現代の映画と違くて、セリフ回しとか慣れなくて、なかなか引き込まれないのですが、これは「どういう話なのかな?」と最初から興味が湧きました。殺人事件の現場から、殺された人のモノローグで始まるんですけど、殺されているのにやたら軽い感じで喋っていて面白いです。

今や誰も振り向かない往年の大女優、ノーマ・デズモンドを演じた女優さんって、どういう気持ちだったんだろう?とウィキを見てみたら、この人はグロリア・スワンソンという女優さんで、劇中のノーマ・デズモンドと全く同じ運命を辿った人のようです。サイレント映画の大スターで、一日に1万通以上のファンレターを貰い、劇中に「私無しではパラマウントは存在しない」というセリフがありますが、現実にグロリア・スワンソンは20本以上のパラマウント映画に出たそうです。

サンセット大通りの豪邸に住んでいたこともあったし、サイレント映画からセリフのある映画、つまり現在の形の映画に上手く移行できなくて消えていった女優さんだっていうところも同じ。しかしこの人は、もう映画界に自分の居場所はないことを認め、ニューヨークに移ってラジオ、テレビ、舞台の仕事をしていたそう。

サンセット大通りは、1911年に初の映画スタジオが出来た当初は、映画関係者が住む地味な地域だったそうなのですが、1920年代から「スター・システム」のお陰で場違いな豪邸が立ち始めたとウィキに書いてありました。

「スター・システム」って何?ってさらにウィキると、女優と映画会社が直接契約して「看板女優」みたいな感じにし、その人ありきで色々な映画を作る。で、イメージも完全に作り上げ、私生活もその通りにさせる。サンセット大通りの豪邸に住まわせて、外に出るときは必ず化粧をしてイメージ通りの服装をしなければならない。

映画の中で、ノーマ・デズモンドという女優が自分はもう50歳で、誰からも求められていないということを受け入れられずに精神を病んでいるのは、「スター・システム」の弊害なのでは?ということのようです。

この人を中心として、ヒモになる脚本家、女優に夢中になり身を持ち崩す映画監督、夢いっぱいの新鋭脚本家、などなど、ハリウッドってこういうところだったんだなあって赤裸々に描いているし、多分今でも根本的には変わってないのだろうなあと思いました。

面白いのはこの脚本家のジョーで、ノーマのヒモになった後は、脚本を書くことにはそんなに興味ないっていうか、精神不安定なノーマに依存されて窮屈に感じてはいるけれども、ヒモとして生活するのは楽ちんで止められない的な印象があるんですよね。なんだろ、ハリウッドはこういうすさんだ人を作る、ってことなのかな?

殺されても、なんかひょうきんな感じでナレーションをするところとか、脚本家だから、殺されたのが自分であっても「事件」を楽しんじゃうのかなあ、みたいな。

この映画はデヴィッド・リンチのお気に入りで、ノーマとかゴードン・コールって名前は『ツイン・ピークス』の登場人物に使われているし、ストーリーは『マルホランド・ドライブ』をインスパイアしたと言われていますが、私が気が付いたのは、ノーマがジョーに買ってあげるコートが「バキューナ」っていう毛皮で、『ツイン・ピークス』でリンチ演じるゴードン・コールが「バキューナ・コート!」って言うシーンを思い出して、「ああ、こっからきたのかあ」なんて思った。

そもそも私はあまり古い作品好きではないので、デヴィッド・リンチ絡みでなかったら観てなかった映画だろうなあと思いますが、そんな私が興味を持って最後まで観たってことは、やっぱり名作なのかな?と思いました。
GreenT

GreenT