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ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONEのGreenTのレビュー・感想・評価

1.0
『オッペンハイマー』での劇場体験が悪くなかったので、ミッション・インポシブルも劇場で観てみたが・・・。

イーサン・ハント率いるのはミッション・インポシブル・フォース?謎の人物からある鍵を手に入れることを依頼される。鍵はイルサ・ファウストという元シークレット・エージェントが持っているが、彼女はイーサンと恋仲?

もー展開が全部読めてしまう。ロシアの潜水艦のシーンではトルピードが潜水艦に戻ってくるって解っちゃったし、砂漠のシーンではイルサは死んだふりしているのも解っちゃった。

その後、アメリカのシークレット・エージェントが事件の話をしているところで、「IMF でローグを起こしたエージェント」ってしつこく説明されるのだが、この下り必要?

ローグ (rogue) ってさ、「反逆」とかそーいう意味じゃなかったっけ?IMF って今でもアメリカ政府の一部なの?それとも単独のユニットなの?

お話は既視感満載なので先が読めてしまうんだけど、ミッション・インポシブルは「最新鋭のスパイ・ガジェット」の名の元に都合の良い設定を持ってくる。今回はコンピューターの顔認知機能を勝手に操縦して、イーサン・ハントじゃない人にイーサン・ハントの顔を浮かび上がらせる・・・。

そして登場人物がみんな「根拠のない推理」をする。爆弾の謎掛けに自分の名字を見つけたベンジーは「敵は俺のことを知っている!」って言うんだけど、そうなのか?!

あと後半で、ヴィランが二人「鍵が開けることのできるものがなにかを知っている唯一の人物」にそれを訊く。この唯一の人物は、自分だけが知っているから殺されないと言っているのに、なんでこのヴィランにペラペラ喋るんだ?で案の定殺されるのだが、ヴィランは仲間の女に「お前は裏切る!なぜならイーサン・ハントに命を助けてもらったから!」ってこの女を殺そうとする!

そうなのか?!A.I. がそう言ったから?!

でこのA.I. の名前が The Entity って・・・。てかA.I. なんだか、なんなんだか、謎の組織なんだか、解らない体で話が進んでいってたハズなんだけど、それにしてもThe Entity って・・・。「スカイネット」とかなんかカッコいい名前考えつかなかったのだろうか。

他の方々の感想で「それ」って邦訳ないだろー!!と戸田奈津子を責めているのが多々あったけど、 The Entity って英語がダメなんだからしょーがないと思う。

ローマのカーチェイスの際は、逃げながら「最新鋭のスパイ・ガジェット」で逃走用の車を見つけるのだが、それがグーグル・マップみたいので「Safe Car:ここ」みたいに見せる(爆)。「Safe Car」って・・・。あとグーグル・マップって言ったけど、画面は昔のDOSみたいな(笑)。

でその車がフィアット500で、ヨーロッパ仕様のすっごいちっちゃい車なのだが、この設定も手垢ついてるよな〜。最初のロシアの潜水艦もそうだけど。オマージュのつもりなの?

で、このちっちゃい車でのカーチェイスのシーンが『ジョン・ウィック4』と被った!「おんなじようなことやってんな〜」みたいな。

でもジョン・ウィックは意外にも楽しめたのに対してこっちはなんだかな〜だった。追いかけてくる金髪のアジア人女(と私はずーっと思っていたが、フレンチなんだって?!この人)が、路駐しているバイクを10台くらい(もっとか?)を自分が運転しているタンクみたいなトラックで「どどどど〜!」ってなぎ倒して微笑むって!?

で、ヴィランに逢うのになんとかGalaって言うパーティに行くんだけど、これがまたジョン・ウィック4と被る。やっぱこの手の映画はネタが一緒なんだなあって思った。

そんでまた、この「Gala」で、VIPルームみたいなところでウダウダやってるのが『ジョン・ウィック4』のカードゲームのシーンと被る・・・。つまんないところまで一緒か!

でこのシーン、イーサン・ハントとその仲間たちが目配せし合うのがすっごい長い。全く緊張感のないシーンなのだが、「目配せ」で緊張感を出そうとしている?

んで手に入れなくちゃならない鍵なんだけど、「手に入れた!あ!偽物だ!」「グレイスが持っている!え?!敵のポケットに入れた!」「ガブリエルが鍵を持って逃げた!でも実はイーサン・ハントが戦闘中に密かに手に入れていた」みたいな、もはや誰が持っているかも解らないが、偽物や知らぬ間に手に入れているのなら、もう気にしてもしょうがない。

そんで登場人物が「ここまでの話はこう、こっからの話はこう、そして観客はこう感じるべき」ってのをセリフで説明してしまう・・・。

やっぱこれを『オッペンハイマー』の後に観たのは間違いだった(笑)。セリフはこっちの方が解りやすいのに、誰が敵で誰が味方なのか解んないし、みんながどーしたいのかも解らない。

『オッペンハイマー』はセリフ多くて追うのが大変だったけど、映像自体が説明になってたり、キーになるセリフがあって全体像はクリアに解ったけど。

あと、やっぱ安い俳優を使っているせいか、誰が誰なのか、みんな一緒に見える。『オッペンハイマー』は印象的な俳優をドンピシャなところに持ってきて、登場人物多くても誰が誰なのか良く解った。

アクションシーンは、『ジョン・ウィック4』と変わんねーな!って思ったけど、『ジョン・ウィック4』の方が面白かった。ジョン・ウィックはすごい工夫が見られて、「興味深いアクションシーンを作ろう!」って熱意が伝わってきたし、「くっだらね〜」って思いながら観ているのに「おっ」と思わされたりしたけど、こちらは「下手なパクリ」感が否めない。

あと『ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、最初のバイクのアクションが「おお〜!!」ってそれだけ絶対忘れないようなアクションあったけど、こちらはな〜。トムクルのバイクで崖から飛び降りるシーンも楽しみにしていたけど、予告編以上のものはなかった。

イーサン・ハントが崖からバイクで飛び降りなければならないと知ったときの「え!?なんで?!そんなことしなくてはならないの?できるんだろうか?」みたいな下りが「要らね〜」って思った。だって〜、やるってもう予告編で解ってるし(笑)。やっぱこれ予告で出しちゃダメでしょ。そこがやっぱりトムクルのエゴなんだよな〜って思った。早く見せたい!ってのを抑えられなかったんだろうなあ〜って(笑)。

このシーンも、最後の列車が崖から落ちるシーンも、アクションシーンすごい凝ってるんだけど、全然ワクワクしないのはなぜ?どーせイーサン・ハント死なないし!ってお約束なのでハラハラしないんだけど、『ジョン・ウィック』だって同じだけど、あっちは面白かったなあ。

なんとなくだけど、それってキアヌは「もう俺ってこれしかできないし、やりたくないから、自分のやりたいことを工夫してやるよ!」って奥ゆかしいのに対してトムクルは「俺ってまだまだイケてるでしょ!カッコいいでしょ!」と観客に強要してくるのが痛々しいって感じなのよね。

このシリーズのファンの人たちはこの「ミッション・インポシブル・フォーミュラ」が気に入っていて、歌舞伎のようにおんなじプロットで「待ってました!」って感じで観ているんだろうからいいんだろうけど、私はこのシリーズを観るたびに同じ感想:「イーサン・ハントに都合良く話が進んでいく」「スパイ・ガジェットがあってなんでもアリだから緊張感がない」「プロットを登場人物が全部説明する」

でもこの映画と次でこのシリーズ終わりにするんでしょ?まあもうこのフォーミュラも続かないよね。
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