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クロスロードのGreenTのレビュー・感想・評価

クロスロード(1986年製作の映画)
1.5
なんつーテキトーな話。

ユージーン(ラルフ・マッチオ)はブルーズに魅せられた17歳のギタリスト。往年のブルーズギタリスト、ロバート・ジョンソンが「クロスロードで悪魔に魂を売ってレジェンドになった」という話に執着するようになる。

ジョンソンの幼馴染だったハープ・プレイヤー、ウィリー・ブラウンがまだ生存しており、殺人でミニマム・セキュリティの刑務所に服役していることを知ったユージーンは、ジョンソンの「レコーディングされなかった30曲目の曲」を教えてもらうために、ウィリーに逢いに行く。

ウィリーはブルーズ・ミュージシャンであったことを否定し、ユージーンと会いたがらないのだが、やっと認めると、「ニューヨークのロングアイランドで生まれた白人にブルーズができるわけない」とか言う。

ユージーンはジュリアード音楽院でクラッシックギターを学んでいる学生で、ジュリアードの先生にも「二兎を負うものは一兎をも得ず」で、ブルーズなんかやめろって言われたりするんだけど、2023年の現在となると「白人にブルーズはできねえ」とか「ブルーズは邪道な音楽」みたいな考え方ってもうないので、なんか空々しく感じる。

ウィリーはミシシッピで若い頃やり残したことを終わらせたいので、ユージンが脱獄を助けてくれてミシシッピまで連れてってくれたら、ジョンソンの30曲目を教えて上げると言われ、ここからはユージーンとウィリーのロードムービーとなる。

プラス「若い修行者と老年の師匠」みたいな、ラルフ・マッチオの『カラテ・キッド』人気に乗っかろう的な臭いもちょいちょいする。

このメンフィスからミシシッピまでの道中で二人がブルーズをプレイするバーやなんかが、ブルーズ・ファンだったらありがたいすごいところなのかも知れないんだけど、私はそっちとんと疎いので、本物のブルーズの聖地なのか、本当のファンが観たら「ありえねー」って思う設定なのか、良くわからん。いずれにしろ素人の私が観て「へえ〜、こういう世界なんだ!」ってワクワクするような映画の作りではない。

んでボロい空き家で野宿することにすると、そこでLAでダンサーになるためにヒッチハイクしている17歳の女の子と出逢い、ユージーンは初体験(多分)をするのだが、彼女はやっぱりLAに行くと去ってしまう。

この失恋があって初めてユージーンは「本当のブルーズを弾けるようになる」みたいな流れになるんだけど、セックスしただけなのにそんな傷心になるのか?とか、ブルーズの深みってこんなティーンエージャーの失恋とかそんな傷なの?とか、多分ブルーズをすごい好きな人が作った映画なハズなのに、雑な感じがな〜。

で、「ブルーズ・プレーヤーたちは、有名になるために悪魔に魂を売る」って話、確かに昔っからレジェンドとしてあった話で、ウィリーが悪魔との契約を解消するためにミシシッピに来たって、面白い話になりそうなのに、その「悪魔との契約」「悪魔に魂を売った」ってのをこう、もっと巧みに解釈して作り上げて欲しかったんだけど、「悪魔=業界」みたいな、なんか全く深みのない解釈。

さらに、ギタリストのロバート・ジョンソンはどーなったん?って思う。なんでハープ・プレイヤーの逸話を負う?この設定が不必要に話を複雑にしていて分かり辛い。おじいさんになって生きてたのがロバート・ジョンソンだったって話にした方がスパッと入ってきたのでは。

で、最もバカバカしいのが、最後のギターバトル!!!!

ウィリーは悪魔に魂を返して欲しいんだけど、ビジネスマンの体の「悪魔」は、ユージーンがギターバトルで自分のお抱えギタリスト、ジャック・バトラーに勝ったら返してやる、と言う。

でこのジャック・バトラーを演じるのがスティーブ・ヴァイなんだけどさ〜・・・・

まずだな、白人にブルーズができるはずないって言ってたのに、悪魔の一番の天才ギタリストが白人なのかよ!って言うのと、ヴァイのギターがメタルじゃん!って言うのと、も〜ここまでも酷い話だったけど、ここ最悪!

この映画の音楽担当がライ・クーダなんだけど、彼もブルーズがテーマなのに最後のバトルにコンテンポラリーな音楽を持って来るのはおかしいし、年月が経ったら「変な映画」って言われるよ!って反対したらしいんだけど、監督のウォルター・ヒルは「その方が一般観客層を呼び込める」ってそうしたらしい・・・。

しかもヴァイかよ・・・。候補に上がってた中にスティーヴ・レイ・ヴォーンが入ってて、彼ならまだ良かったと思うけど(まだ生きていたのに!)、ヴァイだもんなあ。すげーデジデジの音で、速弾きギターで、デヴィッド・リー・ロスやホワスネで弾いていても全くいいと思わない人だったけど、ことブルーズとなったら全然魂を感じない。

なんでここに黒人のズブのガチのブルーズ・ギタリストを持ってこないのか。これこそ「ホワイトウォッシュ」だよね。

しかも、ユージーンはヴァイに敵わなくて、しょうがなく「必殺」ジュリアードで習ってたクラッシクギターのフレーズを弾くと、ヴァイはそれに対抗するフレーズを弾こうとすると「ピキッピキッ・・・」って弾けなくて、ギターを投げて退場する!!

これブルーズ・ギター・バトルなのか!!これブルーズ・ギターのファンたちは受け入れるのか?!きちんと弾けるのと深みのあるプレイって違うんじゃ?!

しかしこの映画iMDbでも評価高くて、7.1/10 なんだけど、高評価の人たちはやっぱブルーズファンの人たちで、「脚本の酷さはサウンドトラックでカバーされている」って言ってたり、あとギター好きな人たちは、あの最後のギターバトル「何度観てもコーフンする」そうです・・・
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