しゃにむ

サンセット大通りのしゃにむのレビュー・感想・評価

サンセット大通り(1950年製作の映画)
4.0
ヒェェ…メンヘラ怖い。
あらすじだけ読んでまるで『ミザリー』じゃないか!と思っていざ観たらだいたい『ミザリー』みたいな話でした。最後のノーマのクローズアップからのフェードアウトには背筋がゾクゾク…何かに取り憑かれたのではないかと思うほど狂気が滲み出ていました。あっぱれな名演技、いや、怪演。時間を遡るクライムサスペンス的なストーリーですがノーマの強烈なインパクトのせいで自分にはホラー映画にしか思えません…
仕事で空振り連発中の脚本家ジョーが借金取りに追われる最中迷い込んだサンセット通りの古い屋敷。ジョーが「まるで大いなる遺産の屋敷みたいだ」と形容した通りに想像するといいです。ひと昔前は立派な豪邸だったのだろうなと思わせる面影はあります。執事のような男に屋敷の中に無理やり連れて行かれます。屋敷では葬式の真っ最中でした…ベットに置かれた布に覆われた人は…布の隙間からだらりと垂れる毛深い腕…その顔は人間のものとは思えない形相をしていた…チンパンジーだから。いやー実に気味が悪いです。サイコの鳥の剥製並みに。やがて現れたのは年の割にはそこそこ美しさを保った女性。どうやらその女性はかつてサイレント映画の大スターとして人気を博したノーマ・デズモンドその人のようです。高慢な態度やいちいちポーズを決め込む様子からまだ夢から醒めないらしい。関わるべからず!本能的に潜在意識が訴えますが、ジョーは金ほしさにノーマを利用してやろうと言葉たくみに仕事を持ちかけます。ノーマには野望がありました。今度はトーキーで一躍世間の注目を集めること。自分主演の映画の脚本を書いていました。内容はお世辞にもいいとは言えない…本人は完璧だと思い込んでいるようです。自分が出れば絶対ヒットすると疑わない。ジョーはノーマを怒らせないように気をつけて脚本の手直しを買って出ます。金と住処を手に入れましたが…ノーマはジョーに屋敷に住み込みで仕事をさせます。仕事中は常に見張ります。ただでさえ不気味な場所なのにさらに不気味な女性に四六時中見張られたら息も出来ない。自分に都合のいい話を書かせ姿はミザリーですねェ…さらに話は怖くなります。孤独に飢えていたノーマは久々に接した男に愛情を感じるようになります。ジョーに異常な愛情を求めるようになります。若い女性ならまだしも…ジョーには有り難迷惑…高価な金品を買い与え、若い頃の格好をしてはしゃいで見せたり…異常にジョーに執着、依存します。ジョーは友だちのフィアンセの若い子にうつつを抜かしていました。あちゃー…これは…ノーマが「裏切ったら許さないからね」とジョーの額を撫でつけながら静かに言うシーンにガクブル…メンヘラ怖い。ノーマという女優は完璧主義者でした。何年経とうがノーマという女優を演じ続けています。若い頃のノーマを。監督が「カット」と言っても演じ続けるのを決してやめないでしょう。もう戻れません。彼女は永遠にスターとしてしか生きることが出来ないのではないでしょうか。
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