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心のともしびのBaadのレビュー・感想・評価

心のともしび(1954年製作の映画)
3.8
原題は"The Magnificent Obsession"

サークの映画としては珍しく、美談的な要素のあるメロドラマ。
とはいえ、主要キャストの演技が的確なので、お涙ちょうだいというよりは、人生の巡り合わせに思いを致すような作品に仕上がっている。

主人公のメリックは、早すぎる父の死により膨大な遺産を受け継ぎ、医学への道を断念して目的もなく遊び続けていた街でも有名な道楽息子。競争用ボートの事故で一命をとりとめるが、入院先の病院を抜け出したときに出会った美しい女性の夫は、彼の事故の為に、用意してあった救命機器が使えず、心臓発作で亡くなった入院先の病院の院長だった。

未亡人への恋心と、贖罪の気持ちから、病院への援助を申し出るのだが、夫人は受け取ろうとしない。あるきっかけで院長の生き方を知ったメリックは、再び医学の道に戻り、生き方を変えようとするのだか、些細な行き違いから、夫人を失明させてしまう。

ジェーン・ワイマン演じる夫人の女心の微妙さがいじらしい。もともと派手な美人ではない上に、少し容姿に衰えが見えるのが残念なのだか、そこは50年代、この時代のファッションは女性を美しく見せるので、気品があって可愛らしい。
夫人が光を失ってからのメリックの献身も、大変な物なのだが、それを続けられる、父親から受け継いだ財産の豊かさにも驚かされる。

早くに父親を失って、生きる方向が定まらなかった主人公が、事故をきっかけに、院長という偉大な父を得て、その死の影(これが、The Magnificent Obsessionの意味するところですね。)を克服して大人になることが出来るか、というのが映画のテーマ。
かなりひねった作りだが、善行は、巡り巡って、という話の進み方は『素晴らしき哉人生』とも通じるところがある。

余談ですが、最初見たUS版ビデオで、クライマックスの手術のシーンの着替えの場面で、ロック・ハドソンの裸の上半身が不必要に長く映し出されていたのように見えたのは、気のせいでしょうか(笑)。ちなみに、BS2の方は長過ぎるとか、別の含みがありそうだとは感じませんでした。

いずれにせよ、女性映画のように見えて実は男性の生き方を描いている、というところは、いかにもサークでした。

(US版VHS/BS2録画)
(道楽息子の回心 2010/7/10記)
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