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メルシィ!人生のArisaのレビュー・感想・評価

メルシィ!人生(2000年製作の映画)
3.6
フランシス・ヴェベール監督の作品
「奇人たちの晩餐会」がとても好きで、他の作品も観たくなりこの作品を観たところ


やっぱりこの監督の作風好きだなという事でBlu-ray買いました。


監督ではなくて脚本で参加してる「Mr.レディMr.マダム」も結構好きです。


このお話の主人公はピニョン。


真面目で冴えない中年の男で、元妻と息子にもつまらないと相手にされない。

ある日、トイレで自分がクビにされる事を耳にしてしまう。


絶望し、身投げしようとしたところを隣の老人に助けられ、クビにされる事を相談すると良い考えがあるという。




ゲイのフリをすること。





ゲイのフリをすれば会社はクビにはできないはずだと、男性が2人並んでいる写真(1人はお尻を出している)にピニョンの顔を合成して会社に送る。



老人の思惑は当たり、会社は見事にピニョンのクビを撤回する!


だけど周囲の目は変わってしまい……


というお話。


フランスならではのコメディ。


切れ味の鋭いブラック・ユーモアならイギリスが1番だと思うんだけど
品のあるブラック・ユーモアならフランスが1番だと思う。


ギリッギリのところで下品じゃないから観てても不快じゃないんですよね。


ピニョンがゲイだと公表してから差別主義の強い人事部長が周りに諭され
ピニョンと距離を縮めていく努力をするんだけど
結果ピニョンに惚れてしまうっていう。笑


ピンクのカシミアのセーターをプレゼントして奥さんと喧嘩して別れるくだりがあったりとか。


会社も何故クビを回避したのかというと差別主義と思われたくなかったのもあるけどゴム会社で、1番の売上がコンドームだったからとか。笑


ピニョンが会社の宣伝係としてゲイのフェスティバルの山車のようなものに乗る事になって
コンドームの被り物つけてる姿がテレビに映ってそれをたまたま息子が観てお父さんを見直したとか。笑



ピニョンはゲイのフリをしただけで初めは何も変わっていなかったのに周りが勝手に変わっていく様が面白かったです。
それで少しずつピニョンも変わっていって…成長していくんですね。



ゲイをテーマに扱っていることからマイノリティを蔑んで笑っているのかと思いきや



ノンノン



マイノリティを笑うんではなくて、マイノリティを笑う人達を笑っているというのがこの映画の本質で、監督が伝えたいところなんだろうなと言うのが分かります。



だけど、そのメッセージを痛烈な批判ではなくあくまでも笑いで落とし込んでいるあたりがこの監督のセンスの良さであり、私も好きなところです。



「奇人たちの晩餐会」もまさにそう。バカを笑う富豪の話だけれど本当のバカはバカを笑ってる君たちだよ、と。
「奇人たちの晩餐会」も本当に面白いからオススメなんです。




結構なお年だからもう新作は作らないのかな…残念




ずーっと笑える抱腹絶倒コメディ…ではなくて、時折心温まる大人向けコメディです。


ちなみに、映画の舞台となった会社は、日本の相模ゴム工業のパリ工場らしいです。
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