⚠️キーとなる肝心な事は書かないようにしたつもりですが心配な方は観るまで読まないほうが良いかもです。
泣いた。
こんな家族素敵すぎるーー。
浅田政志さんというカメラマンの著書「浅田家」「アルバムのチカラ」という2つの原案を基に作られた本作。
前半は浅田さんの家族を撮った「浅田家」、後半は東日本大震災を舞台にした「アルバムのチカラ」の色がそれぞれ濃いのでよくこれを1本にまとめたなと感動しました。
それ程、かなり色合いが違うものになっています。
前半はかなりコメディちっく。浅田家の皆さんがとても暖かくほのぼの。
政志が写真の専門学校で卒業制作の課題として「あと一枚しか写真を撮れないなら何を撮る?」と先生に言われ、家族の写真を撮ることにするんですね。
それが「浅田家」
政志は普通に家族の写真を撮るのではなく、家族のなりたかったものや面白いコスプレをして撮っていく。
実際にエンドロールで本物の浅田家の写真が出てくるんですが、劇中の写真とそっくり!
かなりクオリティ高く再現されてて面白いです。
父がなりたかった消防士の写真を撮るために、消防車と消防服を同級生にお願いして借りてる兄の姿なんかは面白さもあって良かったです。
政志の突拍子もない思いつきに吃驚しながら付き合ってあげるんですね。
こういう家族の中で育ったから自由気ままな感性を持ち合わせたんだなーって
やはり環境って大事だなと思いました。
この「浅田家」の写真集が写真界の芥川賞と評される木村伊兵衛写真賞を受賞してから後半に入ります。
自分の家族だけではなく、全国各地の家族写真を撮るようになる政志。
のちに、東日本大震災がおきた時に岩手に向かうんですが…1番最初に家族写真を撮った家族が岩手の人達だからだったんですね。
後半は割と真面目な展開で、グッとくる場面も多いです。
地震や津波で汚れてしまった写真を洗浄する小野くんとの出会いが政志を突き動かしていくんです。
綺麗になった写真をお迎えにきた人達の嬉しそうな顔。
時には悲しい顔をしながら手にする人もいたでしょう。
在りし日の思い出がそこにはあっていつもタイムスリップできる。
そんな素晴らしい写真洗浄というお手伝いをしていくんですね。
小野くん演じる菅田将暉の感情を抑えた演技がまた良くて流石の演技力だと感じました。
北村有起哉さん演じる名もなき男性のシーンは、あの地震を経験した人なら誰でも彼の気持ちが分かる…屈指のシーンだったと思います。
かくいう私も実は、地元岩手で東日本大震災を経験した1人。家も流されたので写真も卒業アルバムもないんです。
だから写真て、何にも変え難い宝物だってことを知っています。
なので後半はその時の記憶もフラッシュバックしながら観てました。
政志がカメラマンだと知り、1人の少女が「私の家族写真も撮って欲しい」とお願いしにくるんですが、その子のお父さんは未だ見つからず…あるのは腕時計だけ…
家族が揃わなければ家族写真なんて撮れるはずもなく…
1人少女の発したひと言で
家族とは何なのか、写真の持つべきチカラとは何かを考える事になるんですね。
政志は悩み抜いた末、どうするのか…
その答えが前半と後半を繋ぐものになっていてこれまた素晴らしかったです。
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写真とは不思議なもので、今ここに居なくても写真を見ればいつでも笑顔のその人に会えます。
写真には大きなチカラがある。
しかし、写真自体がなかったとしてもあの日あの時の思い出、手触り、体感したことは消えることはない。
愛された記憶も愛した記憶も
写真がないからといって生涯消えることはありません。
大事なのはその人を想い続けること。
心のシャッターに刻み続けることでいつも会いたい時に記憶の断片を取り出すことができる。
それがまた明日へ進むチカラとなるのでしょう。
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中野量太さんの描く「家族」すごく好きです。
「湯を沸かすほどの熱い愛」も母の愛が伝わる良い作品でした。