Arisa

スウィング・キッズのArisaのレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
4.4
⚠️若干のネタバレです。



韓国映画凄すぎる!!



2020年に入り
新感染をはじめとし
パラサイト、エクストリーム・ジョブ、お嬢さん、EXIT、レッドファミリー、MASTER、と韓国映画を観てきました。


巷で話題になったパラサイトの衝撃もありましたが、私にとっては元旦に観た新感染がとても響くものがあり、韓国映画を中心に観て行こうかなと思っていた最中でした。

何本か観てやはりどれも面白く(二本くらいそうでもないものもあった。。)


8本目に選んだのがこの作品。



「スウィング・キッズ」



EXOのD.O君主演です。



EXOはそんなに知らないけどD.O君は好き。


そんな彼の主演映画、予告で観て面白そう!と思って行きました。


朝鮮戦争下の巨済島のお話。
捕虜達が収容されている収容所で新しく就任した所長の考えの元、ブロードウェイのタップダンサーだったジャクソンをリーダーとし、タップダンス部を作ることに。


このダンスチームが、個性豊かで面白い。


朝鮮人民軍の英雄の弟で問題児のギス、朝鮮民間人捕虜のカン、通訳で雇われた紅一点のヤンパンネ、太ってるのに栄養失調の中国人捕虜のシャオパン。


前半は本番に向けてダンスの練習に勤しむシーンが殆どで終始ほのぼの。


国境を越えた即興ダンスバトルも突如勃発したりして、こんな戦争ならいつでもやってほしい。
所々でクスッと笑えるシーンもあったが国の違いなのか私たち日本人には分かりにくいギャグがあった。

楽しいけど…

少し退屈かなぁ、思ってたのと違うかも。


なんて思い始めたのは確か。


ただ、こんなに練習風景を見せてるって事はとても素晴らしいダンスを披露してラストは拍手喝采で終わるんだな


どんなダンスで魅せてくれるんだろう!



と期待が高まっていったが





後半、ある人物の登場で
その期待の高鳴りはガラッと変わっていった。


あ、これは戦争下のお話だったと。



前半の少々退屈なお遊びなシーンも布石だったんだと気付かされる。ちょっと怖いシーンもあります。


この作品のサブタイトルは「クソ、イデオロギー」
まさにピッタリ!


イデオロギーって何だろう?



政治的なものって、一人一人にとってはそんな大事な事じゃないよな。



そんなもの、ぶち壊しちゃえ!



タップダンスに魅せられた4人にはもはやそんなもの関係なかったと思う。



人民軍の英雄の兄を持つギスも、自分の立場と自分の想いに揺れ動きながらいつも
ただダンスがしたい!と足は疼いていたろう。


政治的な思想より大事なものがあるんだ。


しかし


大事なものを守るためにやらねばならない時もあるんだ。



戦争とは無慈悲なものだと改めて思い知る。



戦争の怖さを知ると同時に人間の変わらない本質、音楽がない世界は無味乾燥である。
音楽やダンス、芸術の素晴らしさもまた思い知る。



外の世界で思い切り踊る、ギスとヤンパンネのダンスシーンは青春さながらに爽やかで素敵でした。
後から知りましたが、時代が全く違うデヴィッドボウイの曲「Modern Love」が流れてたようですが洒落てますね。



チームを抜けると決断し歩を進めるも、仲間の奏でる足のリズムに歩む足を引き返し、泣きながら踊るカンの姿も良かったです。


好きなものを止める事はできないんだというシーン。



クリスマスに舞台で踊るダンスシーンは「セッション」の9分間のドラムソロに匹敵する素晴らしい出来でした。
名シーンです。



ある日、ジャクソンが崖の上でギスに言う



「カーネギーホールで踊るんだ」



みんなで夢の舞台を目指そう。





って力説してるのにギスは英語がわからないから何を言っているのか理解していない。


でも次の瞬間、ジャクソンがタップしだすとギスも反応して踊るんですよね。



ダンスは国境を越える。音楽は国境を越える。



でも戦争はそういった彼らの想いも全て壊してしまうんだなと。





涙なしにはラストは迎えられない。




今も余韻がすごいです。



傑作です。
Arisa

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