当時トランスジェンダーであるヴィーナスを
家族が無視したりいじめていた
マッチョな男が流行にもなっていた時代


ヴィーナスを受け入れたハウスの代表の言葉にもあなたたちを憎むとあるように抑えた表情にも家族への怒りが滲んでいる


カリスマ、スター性を持っていて映画にも出演しているヴィーナス
家族は35年もこの事件を放置していた？


80年代のニューヨーク
コカイン戦争やクラックの流行で街が射撃場になり殺人が大量発生した恐ろしい時代
もしこの頃そこにいたら秒で殺されていただろうなと映像を見ていて思う


終盤
ヴィーナスと話して理解したかったと振り返る家族
でも当時は明日考えよう、明日やればいいと先送りがずっと続いてしまったある日事件が起きた


あと1日話すのが早ければヴィーナスは亡くなっていないかも

素晴らしいドキュメンタリー作品。
私が1990年の映画
『パリ、夜は眠らない。』を知ったのは
『ル・ポールのドラァグ・レース』で
度々名前が出てきていたから。
ル・ポールがよく口にしており、
お馴染みとなっていた。

『パリ、夜は眠らない。』は
ニューヨーク市の活気に満ちた
アンダーグラウンドな世界を
世界に初めて本格的に紹介した作品。
参加者たちがダンスなどのカテゴリーで
競い合う華やかなボール(舞踏会)を
記録したものである。

本作はその映像も交えながら、
ヴィーナス・エクストラヴァガンザの
悲しい死の真相を追いかける。
【以下内容に触れています】

差別に満ちた時代から
自己表現の場であった「ボール」
自分が理想とする存在になれる場所。
この世界では、「ハウス」と呼ばれる
「マザー」や「ファーザー」が
率いる代理家族が存在する。
実の親族から疎外された人々にとって
それは心の拠り所である。

ヴィーナスのインタビューで
勝手に男に触られ、勝手に激怒され
「オカマめ」「ホモか？殺してやる」などと
暴言を吐かれたと話しており、
その男の身勝手な愚かさに
本当に腹が立った。

この作品では、
ヴィーナスと血の繋がりのある家族と
ニューヨークのボールルームで
見つけた家族、
その二つの世界が一体となり、ヴィーナスの
生きた証を懸命に尊重しようとする。
ヴィーナスの兄たちが自分の昔の振る舞いを
反省し、「人は変われる。変わらなくては」と
話していたのが印象的。
そして本当にヴィーナスへの理解を示して、
ボールの家族とも仲を深めていく。
人間の尊さを見た。

当時23歳のヴィーナスは
ホテルの部屋で絞殺体で発見された。
彼女の殺害事件は長らく
未解決のままであり、
30年以上が経過した。
ヴィーナスについて友人が
「いつもリスクを冒して他人の車に乗る
望むものを得るためにしたいことをした」
「彼女のクレイジーさが好き」
と語っており、その天真爛漫な奔放さを
奪った犯人が許せない。

ヴィーナスの二つの家族は弁護団を雇い、
未解決事件の再捜査を求める。
その結果、知り得なかった情報を得て、
捜査を再開させることに成功する。
だが犯人は未だ判明していない。
家族の心情を思うとやりきれない。

しかし同時にこの作品では
歴史的な一歩として
ヴィーナスの名前を死後に法的に変更する
請願に成功している。
彼女を公的に「ヴィーナス・ペラガッティ・
エクストラヴァガンザ」として
認めさせたのだ。
家族は彼女が自ら選んだその名前に
墓石を交換する。
さらにジャージーシティにある
彼女の幼少期の家を歴史的建造物として
正式に指定させることにも成功。
ヴィーナスの歴史を確かに取り戻した。
これは本当に素晴らしいことだと思った。

下記は印象に残った言葉たち。

「コンビニに行くときは
ランウェイみたいに歩いた方が良い」
「人生で何度も命を失いかけた
でもここにいる。運が良かった」
「泣き疲れて行動したいと思った」
「全員が自由じゃなきゃ誰も自由じゃない」
「ボールではあごを上げて頭を高くし前を見る
そうすることで身を守ることもできる」

2025年11月10日

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