ぐるぐるシュルツ

お引越しのぐるぐるシュルツのレビュー・感想・評価

お引越し(1993年製作の映画)
4.3
覚えておくことは片手数えられるほど、
なんて足りひん!

〜〜〜

相米慎二監督作品の中でもとっても評価されていて、いつか観たいなぁと思っていたが、東京のTSUTAYAではほとんど取り扱いがなく、しかも大体貸し出し中。
まさかU-NEXTでオンラインで観られる日が来るとは……。

若かりし中井貴一のダメ男感や桜田淳子のリアルな母には結構堪えるものがあるけれど、
それよりなにより子役の田畑智子。
文字通りこの映画の主人公たる堂々とした演技。レン子というキャラクターは、一度観たら記憶にいつまでも残り続けるほどだと思う。
すごい。

〜〜〜

前半のコメディタッチから徐々にシリアスになっていく物語。レン子の気持ちが混乱していくにつれて、段々と奥深くに入っていく心象。

個人的な思春期の経験と相まってか、レン子がお風呂に立て籠もるシーンでの、夫婦の演技には自然と涙がポロポロ止まらなくなる。
本当悲しいよな、親の別居とか離婚とか。
結構辛いんだよな、わかるぞレン子。

そして、
最後の「おめでとうございます」に、
心臓の鼓動が早まってしまう。
鬼気迫っている。
その後の海老一 染之助・染太郎は早すぎるわ!というツッコミはなかなかシュールだったけれど(笑)

〜〜〜

京都弁が心地よく、
レン子の会話の切り返しも
表情も
ギリギリの心境も
ずっと観ていたいほど魅力的だった。
エンディングロールでは、
フェリーニみたいな演出。
そして、指差して『未来へ』!!

日本の夏、子供の頃の夏。
大文字焼きに花火や神輿。
琵琶湖のほとりの小綺麗なリゾートホテル。
もう帰ってはこないものたちや
二度と帰れない場所たちを
いますこし思い出した。