とり

ありがとうのとりのレビュー・感想・評価

ありがとう(2006年製作の映画)
4.0
この年の夏の終わり頃だったかな、劇場の予告編でこの映画を初めて知ったのは。
突然、何の心の準備もない娯楽モードの私に突きつけられた予告編は大変ショッキングな数分間でした。
阪神淡路大震災。街はきれいに復興したけど、当時関西に住んでた人の心があの震災に関して何も感じなくなることは一生ないと思う。
正直、この映画を観たい気持ちと観たくない気持ちが入り混じってて。
冒頭の30分ほどはかなりきつかった。
海と山に挟まれた東西に広がる美しい神戸の街並みが上空から映し出される。
海からの風景と山からの風景でかなり丁寧に撮影されており、あそこはアレやな!とちょっと懐かしい思い出がよみがえる。
そして当日の早朝。大地震が起こる前の静けさと、突然の烈震でその静寂を打ち破るシーンが恐ろしくて恐ろしくて。
テレビのドキュメンタリー番組とは明らかに違うリアルな映像で、胸がドキドキしたし息苦しくて仕方なかった。観に来たことをちょっとだけ後悔した。
親類や親しい友人がたくさん住んでる、大切な思い出がいたるところにつまった街。
まったく連絡がつかなくて1日中テレビで読み上げられる死亡者一覧に目を走らせてた時の気持ちは思い出したくない。
冷静な目では観られないながらも、地震の特撮は素晴らしかった。
一番火災が激しかった長田区の商店街がメインだけど、それ以外の時折写る地域の描写も丁寧で全体から物凄く誠実な思いが伝わってくる。
地震が襲った後の混乱の中で描かれるドラマも良かった。非常にベタなお涙頂戴エピソードなんだけど、全く白けることもなくすんなりと受け入れられた。
出演者もみんな良かった。赤井英和のあの演技は人によってはダメかもしれないけど、私は良かった。赤井は赤井でしかない相変わらずの演技だったけど、人の良さそうなおっちゃん像が全身からにじみ出てたし、非常に人間臭い部分に好感が持てた。
実際のプロゴルファーをモデルにしてるということで、本人がどういう人かは全然知らないけど。
他の出演者たちも一瞬だけのカメオ出演(この映画では賛同出演とクレジットされてた)ながら上手い使われ方だったなぁと思う。
思わず泣いてしまうつらい現実と向かい合う印象深い場面では豊川悦二が出ていたり、復興に向かって前を向かなければならない時にはお笑い芸人が。Mr.オクレなんているだけで笑える。
後半はゴルフのスポ根ものに置き換わっていて、ルールを詳しく知らない私にはちょっとわかりにくかったのと結果を知ってるだけにちょっと惜しい感じがした。
まぁ置き換わってるとは言っても、人と人が支えあうことの大切さとか希望の象徴として必要だったんだと思うけど。
前半はつらい涙で後半は感動の涙っていう構成だった。
そしてテーマソングは河島英五。
エンドロールが終わってから赤井と田中好子が「ありがとう」のメッセージを我々に向かって語りかけてくれました。
この映画にはたくさんの「ありがとう」が織り込まれてた。
全然関係ないけど「ありがとう」と言えば「浜村淳です」。
MOVIX亀有
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