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絞死刑のkyokoのレビュー・感想・評価

絞死刑(1968年製作の映画)
4.2
ものすごく面白かった。
2件の強姦殺人事件によって死刑囚となった在日朝鮮人R。
トラウマになりそうなぐらいリアルな死刑執行の描写から一転、失敗に終わったRの死刑のやり直しをめぐるドタバタが滑稽で不謹慎きわまりなくてゲラゲラ笑ってしまう。
とにかくRの記憶を戻すべく熱心に再現ドラマを演じる教育部長、終始おとぼけの所長、ドSの医師、意味不明な教誨師、鎮座する検事……秀逸なキャラが揃いぶみ。
Rがとてもいい顔をしている。

密室だけにおさまらず想像が羽ばたいて外に飛び出してそこから徐々に不条理劇へと展開していってもまだ面白い。次第にRと自分との境界線をなくしていく者、妄想でしか他者を認識できていなかったR。
もしかしてこのまま死刑執行しないで終わるんじゃないかと思ったけどね。

皮肉と矛盾に満ちたこの作品で大島渚が突きつけた死刑制度の問題は、50年経った今も変わってはいない。
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