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EO イーオーのkyokoのレビュー・感想・評価

EO イーオー(2022年製作の映画)
4.0
ブレッソンの『バルタザールどこへ行く』は残念ながら未鑑賞。この作品にインスパイアされたというスコリモフスキ監督の新作は、ほのぼのドンキー映画……なわけがなく、不穏な音と刺激的な赤から始まる、ロバEOの、ポーランドからイタリアへの不条理旅だった。

優し気に語り掛ける者もいれば欲望や暴力に囚われた者もいる。
サッカーの試合で理性を失う人々(うっかりEOがPK蹴っちゃうのかと思ったわ)、移民の女とトラック運転手、若き司祭とフランスの未亡人(ユペール様!)、そして愛しのカサンドラ。
目の前に現れる人間たちを見つめるEOの大きくて愛らしいお目目は常に何か言いたげで、漆黒の瞳に浮かぶ表情が実に豊か。じっとのぞき込まずにはおれない。

流浪の果てに広がる光景には希望もないけど絶望もない。人間だろうがロバだろうが、結局生きるってこういうことでしょ、って、EOに言われたような気になる。

四つ足ロボットの体をなしていたのは、瀕死の体から抜け出た魂か。
この発想といい、音の使い方といい、衰えを知らぬ御年84歳の頭の中は一体。。。
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