こたつむり

グエムル -漢江の怪物-のこたつむりのレビュー・感想・評価

グエムル -漢江の怪物-(2006年製作の映画)
3.7
♪ オレノ名ハ狂乱 九月ニ憂鬱ヲ飲ミ込ンダ
  系統樹ハ一致シナイ
  霊長数トハ一致シナイ

ポン・ジュノ監督風味のモンスター映画。
…なので韓国版『ゴジラ』と呼ばれてもいますが、根底にあるのは、相も変らぬ自国批判。

市民と対立する警察とか。
役人が公然と賄賂を要求するとか。
患者に寄り添わない医者とか、遺族を晒すマスコミ(以下省略)…そんな内容を物語にサラリと絡めているのです。自然体だけど鋭い筆致です。

更に見事なのは、その深奥を突いたこと。
つまり、韓国の上にドデンと座り込んだ黒幕的存在、某米国を批判しているのです。勿論、某米国の所為だけにせず、きちんと自国の闇に向かい合うことが前提。

それが顕著だったのが主人公の造形でした。
《怪物》に翻弄される彼と“大国の都合”に左右される韓国。どちらもイラつくほどに愚昧であり、目の前で起きた事象に七転八倒するだけ。

それに《怪物》の姿も気持ち悪いのです。
《ゴジラ》のような威風堂々とした雰囲気は皆無。そこにあるのは、大国の都合で変質した異形。「何のために生まれてきたのか」と思わず天を仰ぎたくなるほどに風景に馴染んでいませんでした。

これが監督さんの見る風景なのでしょうか。
傀儡と化し、生きるために食糧(怪物の場合は人間)を運ぶ日々。うーん。

だから、怪物映画として向かい合うと微妙。
カタルシスは排除されているし、重苦しいテーマを取り扱っているのに音楽は剽軽。ズボンのゴムがゆるゆるな主人公にも共感はできず。どれもこれもが違和感だらけでした。

まあ、そんなわけで。
賛否両論(というか否定的な意見の方が多いのかな)になるのも分かる作品。でも、監督さんの“鋭さ”を味わうスタンスならば傑作に変わると思います。

あと、ペ・ドゥナは美味しいところを一瞬でかっさらう女優さんだと再認識しました。“あの場面”に見せたキメ顔は永久保存して飾りたいくらいです。お持ち帰りぃ。
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