いい映画だとか、感動したとかいうよりも、衝撃的な映画だった。
自分は戦争映画が苦手で普段あまり観ない。
戦争の悲惨さは学校教育で嫌というほど叩き込まれてきたし、あまりに悲惨すぎて、酷すぎて、もうわかったから、これ以上見たくない、という気持ちにどうしてもなってしまう。
これも見ているのが辛い映画だった。
悲惨な光景と悲壮な音楽が頭から離れなくなった。
戦時下の極限状況にあって、人間性を保ち続ける人間もいれば、残虐性や利己主義をむき出しにする人間もいる。そしてその間で揺れ動く主人公、という構図はわかりやすかった。
バーンズは「悪人」ではないと思う。
人間は誰もがバーンズになり得る。
彼も、戦争さえなければあんな風にはならなかったかもしれない。良き家庭人だったかもしれない。
国の為だから。戦時下だから。極限下だから。個人ではなく国の一兵士だから。合法だから。敵だから。あるいは金のため。
全体主義に取り込まれ、個を失い、「国の一兵士」という仮面を被ったとき、人はどこまでも残虐になり得る。
相手が生身の人間であるということを忘れてしまうのかもしれない。バーチャルの世界のゲーム感覚になってしまうのかもしれない。
一方で、わたしたちはエリアスに希望を見ることができるが、彼のような人間はこの世の中では簡単に抹殺されてしまう。
昨今の国家関係の悪化を見ていると、みんなどんだけ戦争したいんだろう、と思わざるを得ない。
応酬に次ぐ応酬、挑発に次ぐ挑発、他国のあげ足取りばかり。
残念ながら、愚かな人類が絶滅しない限り、争いは絶えず、戦争は無くならないだろう。
日本人とか何人とかいう以前に人間として、いまいちどこういう映画を観て、その意味を考えるべきじゃないかと思う。