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第9地区のhynonのレビュー・感想・評価

第9地区(2009年製作の映画)
3.8
「グランツーリスモ」のニール・ブロムカンプ監督作品、ということで鑑賞。

エイリアンが地球を侵略、というパターンが多い中、この作品では暴挙を振るうのは人間の方。

エイリアンがチープなのが残念。いや、わざとなのか。
動きや行動が人間。
なぜか英語でコミュニケーションできる。服も着る。
不気味でミステリアス、といったエイリアンらしさや怖さがない。

その反面、人間の描き方はものすごくリアル。

こういう状況で人間はこう行動するよね、という人類の反応や行動パターンが本当によく描かれている。
それらを映画を通して俯瞰的に見ることで、人間の愚かさや利己性や、残虐さが余計に際立つ。

現実社会でのさまざまな問題…
たとえば、移民の問題だったり、施設・交通機関・居住区域などの物理的隔離に基づく差別、特定の人種に対する蔑称、混乱に乗じた非合法の商売、戦乱下の非人道的な残虐行為、マスコミの歪曲やねつ造報道、それらに翻弄され踊らされる人々、アフリカでの迷信に基づくアルビノ狩り(手足切断や殺害)など、人間社会におけるさまざまな行動に対する風刺が、これでもか、と込められている。
その点は本当にすごい。

昆虫が大の苦手なので開始5分で観るのやめようかと思ったけど、見た目以外は人間なので、だんだん可愛く見えてくる。
これもまた、外見で先入観を持つな、というメッセージなのか。
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