
昔々、そのまた昔。都には⻤が現れ、⼈々を襲っていた。 貴族である<源蒼(みなもとのあお)/鈴⽊拡樹>の家⾂、<坂上⾦之助(さかがみきんのすけ)/喜⽮武豊>も⻤に襲われるが、反撃して⽚腕を斬り落とすと、⻤は捨て台詞を吐いて⾶び去った。 これを蒼に報せると、それを聞いた同じく家⾂の<碓井四万(うすいしま)/千葉哲也>は、蒼の奥⽅が神隠しに遭ったのも、⻤の仕業ではないかと⾔い出した。 10 年前のある朝、奥⽅の<紅⼦(べにこ)/柚⾹光>と娘の<藤(ふじ)/樋⼝⽇奈>は忽然と姿を消した。庭には⻤らしき⾜跡が⼀対、残されていたという。 それから紅⼦たちの⾏⽅は杳として知れない。 それでも「紅⼦と藤は⽣きている」と信じる蒼は、⻤の根城を探し出し、⼆⼈を取り戻そうと⼼に決めて、⾦之助、四万、そして<桃千代 (ももちよ)/⼀ノ瀬颯>らと陰陽師の阿部辺丁迷(あべべていめい)のもとへ。だが、そこに⾦之助を襲った⻤の<栃ノ⽊(とちのき)/早⼄⼥友貴>がやってきて、桃千代を連れ去ってしまう。栃ノ⽊を追いかけ、蒼たちはシノナシ国へ向かった。 その頃、紅⼦と藤、紅⼦の両親は、シノナシ国の⼩さな村に⾝を寄せていた。紅⼦と藤の舞の⾒事さに村⻑の<⼋⼗⼋(やそはち)/粟根まこと>は感⼼するばかり。そして⼋⼗⼋に尋ねられた紅⼦は、村を訪れた経緯を語り始めるが……。 ともに⽣きるか、ともに死ぬか――。 ⾎の宿命に引き裂かれた⼆⼈の、哀しきお伽噺が今、幕を上げる。